Q.「ベニコウジ色素」は危険な着色料なのでしょうか? 報道を見て、不安になっています
「紅麹」から作られる「ベニコウジ色素」。体への安全性は?
A. 問題のサプリとは別で、過度な心配は不要です。極端なデータを、鵜呑みにしないようにしましょう
「ベニコウジ色素」(Monascus Color、モナスカス色素)は、紅麹から作られる天然着色料です。ピンク~赤色の色付けを目的として、ゼリーやアイスクリーム、ソフトドリンク、ヨーグルト、ジャム、キャンディー、ケーキ、パン、カップめんなど多くの加工食品に使用されています。厚生労働省と消費者庁が出している最新の第10版食品添加物公定書にも掲載されている正規の食品添加物で、同書にはその定義がこう記されています。規格を外れていなければ、食品添加物として使用することは法的に問題はありません。ただし、本品は、ベニコウジカビ属糸状菌(Monascus pilosus及びMonascus purpureusに限る。)の培養液から得られた、アンカフラビン類及びモナスコルブリン類を主成分とするものである。デキストリン又は乳糖を含むことがある。
食品添加物は、「指定添加物」(食品衛生法第12条に基づき厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した添加物)と「既存添加物」(長年使用されていた実績があるものとして厚生労働大臣が認めたもの)に分かれ、ベニコウジ色素は後者に相当します。つまり、公定書に記されているからといって、必ずしも安全性が保証されているわけではありません。そのため、近年はその安全性に関する検証も行われています。その一例として、公益財団法人日本食品化学研究振興財団が公表している「既存添加物の安全性評価に関する調査研究(平成8年度調査)」があります。
この中では、ネズミを用いた実験で急性毒性や反復投与試験、発がん性試験などが調べられた結果が詳しく報告されており、そのほとんどで問題は見つかりませんでした。しかし一点だけ、次のような記述もあり、気になる方もいるのではないかと思います。
腎臓への悪影響が懸念される内容なので、現在問題となっている、腎疾患を引き起こす可能性が指摘されている「紅麹サプリ」と同様に、危険なのではないかと不安になるかもしれません。しかし結論から言えば、まったく問題にしなくていいと筆者は考えます。なぜならネズミに投与された量や期間が、尋常ではないからです。「毎食の食べ物中の5%がベニコウジ色素」などという状況は、私たちがこの色素を添加した加工食品を選んで食べたとしてもありえません。しかも、寿命が長くても2年(およそ100週)にも達しないネズミにとっての13週間は、私たち人間なら10年くらいに相当します。万が一のことを考えて、現実にはあり得ない大袈裟なレベルで行うのが毒性試験なので仕方ありませんが、このようなデータを鵜呑みにして一喜一憂する必要はないことを心得ておきましょう。混餌(0.6、1.25、2.5、5、7%)投与による13週間の反復投与試験において、7%投与群で体重増加抑制、5%以上の投与群で腎細管上皮の壊死が認められている。
なお、衛生管理上添加した方が好ましい「保存料」などとは違って、食品への着色は必ずしも必要なものではありません。「おいしそうな見た目」は少し損なわれるかもしれませんが、着色料がどうしても気になるという方は、着色料が使用されていない食品を選ぶようにするといいかもしれません。