Q. 50代からの老後資金準備。貯金しか方法はない?
専業主婦の52歳女性(ヒトミさん 仮名)。「3人の子育てを終えました。3人とも奨学金を使わずに学費を出して大学を卒業し、社会人となり、私もひと段落です。家のローンは完済していますが預貯金が300万円ほどしかなく、老後資金が不安。コツコツ貯めるしかないですか?」とお悩みです。50代から老後資金を準備するには、やっぱり貯金するしかない?
老後資金以外の大きな不安がない点は、安心
お子様の独立、おめでとうございます。奨学金を使うケースも増えていますが、3人とも奨学金なしで社会人となり、ほっとされていることと思います。そして、老後資金に不安がある方は、多額の住宅ローン返済が残っている方や賃貸住まいの方も多いのですが、ヒトミさんは、住宅ローンを完済されているとのこと! つまりヒトミさんは、「返さなければならないお金」がないわけですので、その点は大きな安心感がありますね。
とはいえ、預貯金300万円から老後資金を準備する不安なお気持ちも、よくわかります。ではどうすればよいか、考えていきましょう。
お金を増やす方法「3つ」のうち、ヒトミさんに向くのは?
お金を増やすには、3つの方法があります。「節約をして支出を下げる」「収入を増やす」「資産を運用する」の3つです。ヒトミさんは専業主婦でいらっしゃるので、2番めの「収入を増やす」を、ぜひ検討したいところです。なぜなら、例えば月10万円を得るとすると、「節約をして支出を下げる」「資産を運用する」ことよりも、働きに出ることで「収入を増やす」ことの方が実現しやすいからです。
月10万円の収入になれば、年間で120万円です。10年間で1200万円になります。62歳時点で、資産がプラス1200万円になれば、だいぶ安心感があるのではないでしょうか。
「専業主婦の期間が長く、仕事のブランクがあって心配」という思いがあるかもしれませんが、まずはパートやアルバイトで仕事を始めるのも手です。今は人手不足ですので、さまざまな求人が見られます。短期間募集もあるので試してみて、自分に向いている仕事を探してみては?
長い人生ですので、仕事を通じてやりがいを感じられるうえに、自由に使えるお金が増えることも、大きなメリットになるはずです。
「今から投資を始めるのは遅いのか?問題」について
ヒトミさんは「50代からお金を増やすには、預貯金しか手立てがない?」と考えていますよね。50代の方からは「NISAも気になるけれど、50代から投資を始めるのは無理ではないか……」という声をよく聞きます。ですが、まだまだ大丈夫です。投資をする場合、一般的には10年以上の月日をかけたいところなのですが、10年たっても、まだ62歳ですから! 特に、最近はインフレ傾向で、(超低金利の)預貯金だけの資産だと、物価が上がっていくと、自分の資産が目減りしてしまうことになるので、むしろ一部を投資にまわすことをおすすめしたいくらいです。
ただし、投資にはリスクがありますので、余裕資金で少しずつ始めましょう。先ほどご提案した、働きに出た場合の収入の一部を、投資にまわしてみるのはいかがでしょうか。
月10万円の資金のうち、どれくらい投資にまわす?
では、どれくらいを投資にまわしたらよいか、ですが、月に10万円の収入があったら、3万円を積み立て投資に回してみてはいかがでしょうか。NISAの「つみたて投資枠」にある投資信託をコツコツ積み立てていき、仮に年利3%で運用できた場合は、10年後に約400万円になります。月10万円のうち、残りの7万円はそのまま預貯金に置いておくと、10年後に約840万円です。投資分とあわせて、合計で約1240万円になる計算です。
10年後は、ヒトミさんは62歳。まだまだ働きたいと思うかもしれません。もしさらに5年プラスして、年10万円を15年間、投資と預貯金にまわした場合、以下のようになります。
<15年後(67歳)の目安>
・3万円の積み立て投資(年利3%の場合)……約680万円
・7万円を預貯金で積み立て(金利0%として計算)……約1260万円
=合計 約1940万円
計算上ではありますが、ほぼ、2000万円になります。
節約で2000万円をつくるのは、節約のプロが歯を食いしばっても厳しそうですが、収入アップと資産運用を組み合わせれば、着実に達成できる可能性があるのです。
数年たって預貯金が500万円を超えたら、積立投資にまわす金額の割合を増やしてもいいでしょう(例えば、積立投資を5万円、預貯金を5万円といった具合に)。
とはいえ、がんばって得た収入すべてを老後資金にまわすのは味気ないですよね。月12万~13万円の収入を目指して、2万~3万円をおこづかいにするのもいいと思います。
ヒトミさん、今からの10年、15年間をどうするかで、老後のお金の安心感が変わりそうだと、実感いただけたのではないでしょうか。ぜひ、ご参考にしてみてくださいね。