ロート製薬が「妊活白書2023」を発表した。「現在子どもを欲しいと思っていないし、将来も欲しいとは思わない」と回答した18歳から29歳の若年未婚男女は、全体の55.2%。男性59%、女性51.1%だった。今回6回目の調査で、この質問の答えが半数を超えたのは初だという。
若年層ということもあり、「結婚」や「子ども」がまだ身近ではないのかもしれないが、それでも大人なのだから、ある程度の人生設計は考えているはず。だとすれば半数以上が子どもをほしいと思っていない人が半数を超えたのは衝撃的だ。国の少子化対策が見当違いと言われるゆえんは、こういう結果にも出ているのかもしれない。
今の状態では子どもを産み育てられない
「将来、子どもが欲しいかどうか」の経年変化 出典:ロート製薬「妊活白書 2023」
「わかりますよ、このアンケート。私は非正規で仕事をしていて、今付き合っている彼もフリーランス。家賃を節約するために同棲しているけど、結婚して子どもを産むなんて、そもそも経済的に無理。さらにお互いになんとかこの不遇な状態から抜け出そうと、まずは自分のことしか考えられないんです。少し前の世代のように20代で結婚なんてむずかしいですね」
アカリさん(30歳)はそう言う。同い年の彼と付き合いはじめて2年ほど、彼のアパートの更新があった半年前に同棲に踏み切った。一緒にいると楽しいと思ってはいるが、アカリさんが住む広めの1LDKでも「ふたりだと狭い」と感じることは多い。ここで子どもを育てるのはもちろん不可能だし、新居へ越したり購入したりすることもできない。
すんなり結婚していく人たちの条件
「本人が大企業勤めで、なおかつそれなりに資産運用していて将来が明るいとか、あるいは親がいろいろ援助してくれるとか。周りを見てもすんなり結婚していくのは、そういう人たちですね。私も彼も地方出身で、夢を抱いて上京したもののあっさり夢が叶うわけでもなくて。でも自分のやりたいことに固執してる。結婚さえすれば幸せになれるわけではないことは周りを見てわかっているから」有名になりたいのではない、お金がたくさんほしいのでもない。自分の「小さな夢」を着実に叶えていきたいのだとアカリさんは言う。そのための苦労は引き受ける、と。彼も同じように考えているそうだ。
「もうちょっと器用に生きる道もあるのかもしれませんが、それができない。だから結婚して子どもをもって、自分の人生や時間を犠牲にしながら生きて、結局、あとで後悔して愚痴を言ってという人生だけは避けたいと思っているんです」
夢破れて故郷に帰った友人たちもいる。家庭を持ってそれなりに楽しく暮らしているようだが、「自分にはできない」と思ってしまうそうだ。
>子どもをもつ意味が見いだせない