恋愛感情だけで成立する関係だから
独身同士のように、先に「結婚」や「同棲」や「事実婚」などの目標があるわけではない。どちらかが死んでも連絡さえ来ないかもしれない。今日を限りにもう会えない可能性だってなきにしもあらず。「それでも“彼”じゃなければダメなんです。いつもヒリヒリするような、もう先がないような感覚が恋という火に油を注ぐのだということもわかってる。でも相手が既婚者なら、誰でもいいわけじゃない。その人でなければダメ。恋なんですから」
マミさんは、決して裕福とはいえない既婚者とつきあったこともある。彼は、いつでも前向きで希望を手放さなかった。
「昇進したいとよく言っていました。昇進したい理由が、自分の後輩たちにのびのびと仕事をしてもらいたいからって。その人には心から惚れました。ときどきうちに寄って、私が作った夜食をおいしそうに食べてくれた。ボーナスが出るとごちそうしてくれるんです。会社は違うけど業種が同じだったので一緒に目指していた資格があって、勉強もともにしました。ふたりとも受かったところで、私は彼に別れを告げました。これからなのにと彼が言ったから、今後は家庭を大事にしてねと送り出した」
「独身だからこそ」できること
マミさんは、不倫はやめられないが主導権を持つのはいつも自分だと、思い出したように言った。自分が独身だからこそ、未練がましくしがみついてはいけない。軽やかに相手を送り出し、またスタート地点に戻るのだ、と。独身だからこそそれができると晴れやかな表情を見せる。「相手を本気で愛したら、このあたりで解き放つのが正しいとわかると思うんです。未練があっても執着はしない、恋そのものにしがみつかない。それが大事かもしれませんね。つらいけど」
つらくても潔く愛し、潔く別れる。その姿勢をもちつづけて、好きな人に真正面からぶつかっていく彼女を、第三者は非難することなどできないのではないだろうか。