約30年ぶりの実母との同居
「私は大学入学と同時に東京へ出てきて、それ以来ひとり暮らしをしていました。15年のひとり暮らしを経て結婚。子どもも生まれました。家族4人で、忙しいながらも楽しい日々を送っていたんですが……」そう話すのは、ノリエさん(48歳)だ。33歳のとき、長年の友人だった男性と結婚し、今年から中学生になる娘がいる。一昨年、実父が闘病の末に亡くなった。ノリエさんには弟がいるが、現在は海外暮らし。母はひとりで暮らしていけると言っていたが、あるときノリエさんが様子を見に行くと、家の中はゴミがたまり、父の自慢だった庭も荒れ放題。
「もう付き合っている親戚もほとんどいないし、母を施設に入れるしかないのかなと考えましたが、母自身は家にいると言い張る。夫が見かねて『うちに来てもらえば?』って。私自身、母と一緒に暮らしたのは18歳までだし、今さらうまくやっていけるのかと不安でしたが、とにかくひとりで置いておくよりはいいかと……」
母は以前の母とは違っていた
うちに来て一緒に暮らすのをどう思うかと母に聞くと、どんよりしていた目に急に力がこもった。家事は私がやるから、あんたも仕事に専念していいからと早口で言った。やはりひとりでは寂しかったのだろう。「結婚したとき中古のマンションを購入したんですが、けっこう広いんですよ。4LDKあるから母にも個室を使ってもらえる。夫と娘も賛成してくれたので、昨年春、母を迎え入れました」
母はもともと東京生まれ。結婚して夫の転勤で中部地方のとある町に居を構えて落ち着いた。ノリエさんはそこで生まれたのだ。
「もともと東京の人だし、馴染めないこともないだろうとたかをくくっていたんです。私の知る母は社交的で、すぐに誰とでも仲良くなるタイプだったし」
ところが母は、以前の母とは違っていた。
>自分からは何もしない母