コロナもあって、孤独になってしまった母
同居ができないから選んだ別居事実婚
「大学進学で東京に出てきてから就職、30歳までひとり暮らしでした。その後、今のパートナーと同じマンションに住むようになりましたが、やはり基本はひとり暮らし。お互いに仕事を中心にした生活をしたかったから」ユウカさん(43歳)はそう言う。同じ空間で人とずっと一緒に過ごすのがつらいと思う人もいる。ユウカさんもパートナーも似たもの同士だったから、別居事実婚のようなところに落ち着いた。
「結婚という生活環境ではなく、恋愛感情ありきの関係。だからどちらかの部屋で過ごすこともあるけど、またひとりきりになって仕事をしたりくつろいだりする。そういう生活パターンがふたりとも好きだったんです」
ところが4年ほど前、父が亡くなり、兄一家が実家に乗り込んできた。母のひとり暮らしが心配だから同居してあげると言われたようだ。ユウカさんは電話でその話を聞いて反対した。
「兄とも兄の妻とも、母は折り合いが悪かったはず。だけど一人きりになった母は寂しかったんでしょうか、兄一家を家に入れてしまった。そして案の定、うまくいかなくなって体調を崩して入院したんです」
四半世紀ぶりに親と近距離別居
ユウカさんが見舞いに行くと、姪が心配そうに「このままじゃ、おばあちゃんがかわいそう」と言った。どういうことなのと詳細を聞くと、「おばあちゃん、ごはんもひとりで食べてる」「家族で外食するときも、ママはおばあちゃんには声をかけないんだよ」と言われた。「兄を詰問しましたが、適当にはぐらかされた。母が退院するタイミングで、うちの近くに越してきてと頼みました。母もさすがにもう息子一家と暮らすのは無理だと思ったんでしょう。自分の財産だけもって私の住むマンションの近くに越してきました。当時、母は70代前半でした。年をとると環境を変えないほうがいいと言われているけど、まだ若いし大丈夫だろうと思ったんです」
実家はそのまま兄一家が住んでいた。いっそ家を売ればと勧めたが、母は兄一家が文句を言ってくるに違いないからぶつかりたくないと言った。
「同居ではないけど、ほぼ四半世紀ぶりに母とごく近くに住むようになりました。そうなればなったでいろいろ問題が出てきて……」
>新しい環境に順応することができなかった