寝室を夫婦別室にした結果
夫婦の寝室を別室にしてから、妻は確かに元気になった。「入眠剤がいらなくなった、よく眠れるって。なんだか複雑でしたね。寝室での会話がなくなった分、妻と気持ちが行き交わなくなったような気がする。『会話が足りないと思わない?』と聞いたら、『食事のときだっていつも話してるじゃない』と。
それは子どももいるから家族の会話ですよね。僕は精神的にも肉体的にも夫婦の会話がほしいんだと言ったら、『私は疲労感を覚えずに生活するのが一番の理想』と言われてしまいました」
ダイキさんがいくら家事をやっていると胸を張っても、詳しく聞けば、掃除、洗濯、夕飯作りは妻の仕事。子どもの学校や保育園の細かい準備も妻、近所との関係、親戚付き合いなどもほとんど妻がマネジメントしているという。
「僕は僕なりに、時間がない中、頑張っているんです。それなのに妻は一度も『こんなに頑張ってくれてすごいね』と褒めてくれない。僕は妻が何かしたら、ありがとう、きみがいるから幸せだと言っていますよ」
男の僕が「こんなに頑張ってる」という意識
妻は「ありがとう」とは言うそうだ。それならいいのではないか。彼はそれ以上に「褒めて」ほしいと望んでいるが、それは「僕が男なのに、こんなに家庭のことをしている」という意識がどこかにあるからではないのだろうか。あるいは、妻に「母的なもの」を望んでいるのではないか。「褒め上手の妻がいれば、夫はもっと頑張れるはずだと思いませんか」
彼はそう言うが、褒められなければできないようなら、その夫は自立していないのではないかと厳しい言い方もしたくなる。確かに人は褒められればうれしいが、それは人間関係におけるオプションのようなもの。褒められなければ何もできないというのは大人としては甘え過ぎだろう。
「妻に認められたい。妻に褒められたい」
それがいけないわけではない。ただ、そう思う時点で、妻を「母のような存在」に置いているのではないか。妻から別寝室を言い渡されて、彼は不安に陥っているのかもしれない。だから認められたい、褒められたい欲求が増大しているともいえるだろう。
「素直に褒められたいと言ってみたらどうか」
そう提言したら、「そんな恥ずかしいことは言えない」と彼は言う。男としてのプライドが邪魔をするなら、それも照れずに白状してしまえばいい。彼がそうやって正面からぶつかっていけば、妻も彼への評価を変えるきっかけになるかもしれない。