孫育てもやぶさかではないが……
63歳、今さらながら後悔している
「この年になって、こんな大変な思いをするとは……」辛そうにそう言うのはマサヨさん(63歳)。短大を出て25歳で結婚、26歳で長男を、28歳で長女を出産した。4歳年上の会社員の夫は定年になると同時に病に倒れ、入退院を繰り返して1年前に亡くなった。
「夫が亡くなってすぐでした。娘がふたりの子を連れて、突然、家に舞い戻ってきた。娘は28歳のときに結婚してふたりの子を授かったんですが、そもそも夫も私もその結婚には反対でした。相手は20歳年上で、当時は妻子がいたからです。離婚して娘と一緒にはなったけど、今でいうモラハラがひどかったみたい。娘は私には何も言いませんでしたが、とうとう我慢しきれなくなってうちに逃げてきたんでしょう」
始まった出戻り娘との生活だが、話が違う?
幼い子を抱えた娘に、夫の元へ戻れとは言えなかった。娘は「とにかく別れたい」と養育費も決めずに離婚してしまったそうだ。「しばらく置いてほしいと言われました。長男も家庭を持っていましたから、私はひとりで暮らしていた。部屋もあるし、娘も働くというなら、少し子育ての協力をしてもいいかなとは思っていました」
当時、娘の子どもたちは6歳と3歳。夫を亡くした寂しさもあって娘の同居を了承はしたが、娘は仕事もせず、子どもの世話をするでもなく、昼間まで寝てはぶらりと出かけていく。
「最初は、今まで夫に束縛されて自由もなかったんだろうから少し好きにすればいいと思ったんですが、数カ月たっても変わらない。いったい、どうなってるの、どうして子どもと向き合わないのと叱ると『私、子どもが好きじゃないんだよね』って。もうね、私はひっくり返りそうになりました。娘は不倫相手だった彼を自分のもとに引き止めるために妊娠した、家庭をもったらもうひとりほしいと言われて生んだ。だけど子どもが好きになれない。めんどう見たくない、と」
私の教育が悪かったのかとマサヨさんは自分を責めた。あのとき、何があっても結婚させなければよかった。いくら後悔してもしきれない。マサヨさんの目に光るものがあった。
>娘が働いてくれないと生活できない