そこで今回は、主に会社員(国民年金の第2号被保険者)が加入する厚生年金保険における次世代育成支援の取り組みとして、現在どういうものが実施されているか整理しておきたいと思います。
そもそも会社員には、産前産後休業の制度とともに育児休業の制度があります。育児休業の対象となる期間は、子が1歳になるまでが原則ですが、1歳になる時点で保育所などに入所できない等、雇用の継続のために特に必要と認められる場合に限り、1歳6カ月まで(再延長で2歳まで)育児休業を延長することができます。よくその取得率の低さが指摘される男性の育児休業取得率は約17%で女性の取得率は約80%となっています。(厚生労働省「雇用均等基本調査」令和4年度より)
1:産前産後休業と育児休業等期間中の保険料免除
主に会社員が加入する厚生年金保険では、産前産後休業および子が3歳に到達するまでの育児休業または育児休業の制度に準ずる措置に基づく休業(以下「育児休業等」という)の期間について、厚生年金保険料が労使ともに免除されることになっています。これらの免除期間は、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。前述のように法律で定める育児休業期間は、原則子が1歳までで、必要と認められる場合に限り最長で2歳ですが、会社によってはそれに類似する制度として子が2歳以後も休業を取れる制度を導入している会社があります。そのような制度にも対応するため、育児休業期間の保険料免除は子が3歳に到達するまでの期間を対象としています。
2:産前産後休業および育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定の特例
産前産後休業を終了して職場に復帰した場合でも、育児休業を終了して職場に復帰した場合でもその後も育児は続きます。そのため休業終了後、労働時間の短縮勤務等で給与が休業前より低額になることがあります。産前産後休業を終了した被保険者が引き続きその子を養育する場合および育児休業等を終了した被保険者が3歳未満の子を養育している場合には、産前産後休業または育児休業等の終了日の翌日(会社に復帰した日)の属する月以後の3カ月間の報酬の平均額を報酬月額として、保険料徴収の基となる標準報酬月額を改定し、会社に復帰した日の属する月から4カ月目の保険料から復帰後の給与水準に応じた保険料になるよう特例が設けられています。
この特例によって、復帰後の働き方によって、もし給与が低下した場合には、定期的な改定時期を待たずに保険料負担が軽減されることになります。
3:3歳未満の子の養育期間における従前標準報酬月額みなし措置
3歳未満の子を養育する期間中の各月の標準報酬月額が、子の養育を開始した月の前月の標準報酬月額(従前標準報酬月額)を下回る場合、従前標準報酬月額がその期間における標準報酬月額とみなされて、将来の年金額が計算されます。つまり、前述のように、育児のため労働時間の短縮勤務等により給与が休業前より低額になった場合、保険料は「2:標準報酬月額の改定の特例」により実際の給与に即した額になりますが、将来の年金額への反映は休業前の(高い)従前の標準報酬月額で計算されるということです。これは、養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、子を養育する前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして算出された年金額を受け取ることができるという仕組みとなっています。
厚生年金保険に加入している人、あるいは、これから加入する人については、育児休業等の制度やそれに伴う各社会保険からの給付金とあわせて、保険料の免除制度等についても確認しておくとよいでしょう。