職場でも、実は「相談魔」と批判されていた
職場でも同じようなことが起こっていた。「結局、私がいろいろな人に相談するのを、人はよく思わないということなんでしょうね。私は以前からけっこう人に相談するタイプだし、それで今までうまくやってきたつもりだったんけど、ママ友も新しい部署も、人への相談を嫌う人が集まっていたんじゃないでしょうか」
アリサさんは、今まで問題なかったことが急にトラブルの元になったため、かなり困惑したし混乱したという。
そんなとき、前の部署にいた信頼する先輩女性から声をかけられ、話を聞いてもらった。
「先輩が言うには、前の部署のときから『相談ばかりしている』と私を批判する人はいたんだそうです。それを先輩がかばってくれていた。相談は悪いことじゃない、あなたにビジョンがあって相談するなら指針を示せるけど、あなたはどちらかというとまったくビジョンなく相談するでしょ。しかも、その問題と無関係の人にも相談する。何をどうアドバイスしたらいいかわからなくて困ってる人もいたの。だから、かまってほしいだけなのではないかと言う人もいた、と言われました」
いろいろな人の意見を聞くことは大事だと、彼女は子どものころから親に言われて育ったという。小学校から大学まで、ずっとそうやって相談してきた経験もある。
「誰にでも相談するかまってちゃん」と言われて
だがすでに彼女も40歳。自身の経験からくる見通しもあるはずだから、社会人になりたての20代前半とは違う。その経験をなぜ活かさないのかと先輩には言われたそうだ。「正直言って、自分の経験だけでものを決めるのが怖いんですよね。もちろん仕事の場合は私だけに決定権があるわけじゃないけど、ひとつの方法を選択して、それでやっていってうまくいかなかったら責任をとらないといけない。それが怖い。子どものことは夫に必ず相談するけど、ママ友との付き合いは夫にはわからない。だからママ友みんなに聞いて同じようにするのが一番無難だと思って」
無難に、誰とも摩擦を起こさないためにと注意してきた言動が、周りには「誰にでも相談するかまってちゃん」と思われたのが、彼女にはショックだったという。
「それ以降、どこにいても神経質になってしまって。先輩の勧めで、会社近くのクリニックでカウンセリングを受けています。夫にも事情を話してみたら、『きみの気持ちはよくわかる。でも周りにきみみたいな言動をとる人がいたら、どう思う?』って。カウンセラーと同じことを言うので、私には味方がいないんだとまた落ち込んで……」
ただ、少しずつ彼女にも夫やカウンセラーの言うことが理解できつつある。人は自分を客観視できなくなると混乱の沼に足をとられる。彼女は、今は大変かもしれないが、身近な先輩や夫に恵まれているとも言えるのではないだろうか。