老齢の親を背負うのは娘の自分しかいない?
外に出て歩くとすぐに疲れてしまうが、鍛える気力はない。そんな母に、あるときアヤカさんはキレてしまった。「どうしてほしいの? 何がしたいの、って。すると母が『迷惑かけてるね、私なんかいないほうがいいよね、ごめんね』って。親にそんなことを言わせた自分を呪ったけど、こういう状況に陥りたくなかったとも思いました。あのとき母を自宅近くに来させなければ、母はあのままひとりで暮らして近所の人たちに助けられながら、今よりむしろ幸せだったのではないかと。結局、親を頼ってしまったのだから、最後まで自分が背負うしかないんでしょう。どうやって背負ったらいいのかわかりませんが」
近すぎて距離がとりづらい近居のデメリット
いっそ施設に行ったほうが母にとっても幸せなのではないかと思っているが、それも言い出せない。母が自ら行くと言うならまだしも、アヤカさんが母を送り込むようなことはしたくないと言う。「母が邪魔なわけじゃないんです。感謝もしているし、いつまでも元気でいてほしいと思う。ただ、近くにいると距離がうまくとれないから、イライラするんですよね。母はそれなりにお金ももっているので、家政婦さんを雇ってもいいんじゃないかと思うけど、とにかく私を話し相手にしたいのがありありとわかる」
このままだと自分のほうが先に倒れそうだと、アヤカさんはときどき思う。夫は夫で、最近、病気がちになっている両親のもとへよく出かけている。それがわかっているから、夫にSOSを出すこともできないのだ。
「ひとりっ子同士が結婚すると、親問題は本当に大変だと痛感しています。私たちが老いたときに子どもに重いものを背負わせないようにしなければと心から思いますね」
やれるところまでやるしかないんだけど、とアヤカさんは疲れた表情でつぶやいた。