「かわいそう」と言われるとモヤる
正月をひとりで過ごすのは「かわいそう?」
「そうか、離婚したんだったよね、ひとりぼっちなのね、かわいそうと数人が言いだして。別にかわいそうでもなんでもないんですけどね。息子は大学の友だちと過ごすらしいし、私は別にひとりでもなんとも思ってない。でも周りは『かわいそう』とばかり言う。不思議でしたし、そんなにかわいそうに見えるのかなと」
結婚しているとき、クリスマスもお正月も自由に過ごせる独身の友人が羨ましいと思ったことがある。義両親に気を遣わなくていいし、昼まで寝ていても誰にも文句を言われないのだから。
「自分がひとりになって、今度のお正月は思い切りゆっくり寝て、家で昔の映画を観て、とわくわくしているんです。習っている絵の宿題もやりたいし。ひとりだというだけで、かわいそうと言われるのはなんだか心外ですね。まあ、そんなことで文句を言ってもしかたがないから笑って流していますが。実際にひとりでいることには傷つかないけど、他人から『かわいそう』と言われることにはモヤモヤします」
他人の目を気にしていたら、ひとりでは生きていけないとチエミさんは言う。外野の余計な言葉は右から左へ流すしかないのだ、と。
学生時代の友人の言葉にハッとした
「離婚なんて今どき珍しくもないのに、やはり周りはいろいろ言いますね。夫の友人たちも『どうして離婚に応じたんだ』『あいつが悪いんだから、もっと制裁を加えるべきだ』とかね。それは夫と私の問題であって、他人にとやかく言われたくないと言い返しました。人の結婚や離婚の話に口を出すべきじゃないなと私自身は痛切に感じています」離婚したからといっても、人によって事情も気持ちもまったく違う。新たな人生が始まるだけのことだ。だからチエミさんは結婚生活を続けている学生時代の友人からの一言にハッとしたという。
「人生、第2幕の始まりだねと彼女は言ってくれたんです。励ますわけでもなく慰めるわけでもなく、淡々と言ったその言葉がうれしかったですね」