48歳、20年連れ添った夫と離婚した
この春、20年連れ添った夫と離婚したチエミさん(48歳)。19歳になったひとり息子は、遠方の親戚の家から大学に通っており、チエミさんは新たに借りた小さなマンションでひとり暮らしを始めた。「ひとり暮らしが初めてなんです。両親ももういないし、帰る場所もない。だけどひとりで暮らしてみたら、そんなに悪いものでもないなと。結婚後も仕事をしていたので、ひとりならなんとか生きていける。離婚の直接の原因は夫の浮気ですが、それ以前からこの人とは生涯連れ添うのは無理だなと思ってた」
夫の浮気が発覚したあと、1年も経たないうちに闘病していた父が亡くなり、あとを追うように母が亡くなった。だからこそ、チエミさんは迷いなく離婚できたという。親に心配をかけたくなかったのだ。
「息子の学費だけは夫に払ってもらうことにして、あとは財産分与をして……。夫も早く離婚したかったみたいなので、案外、あっけなく別れました。最後に夫が『ごめんね』と言ったのがなんだか悔しくて、謝る必要はない、息子が生まれただけよかったと言いました。本当はもっと違うことを言いたかったような気もするけど、ああいうときは何が本音なのかわからない」
「お正月もひとりなの? 大丈夫?」と驚かれる
その後は自分と向き合う日々が続いた。離婚経験者の友人から「過去への下手な反省はしないほうがいい」と言われたので、これからの生き方を考え続けた。とりあえず仕事はある、なんとか定年まで勤めて、その後も働けるだけ働こう。それだけではつまらないから、以前からやりたかった絵の勉強を始めた。休日には画廊や美術館を回ることもある。「この年でひとり遊びが上手になりました。憂さ晴らしにひとりカラオケに行くこともあります。なんだ、ひとりでどこへでも行けるじゃないかとうれしくなって。贅沢はできないけどたまには同僚や学生時代の友だちと食事に行ったり。今までできなかったことを楽しんでいる感じですね」
12月に入ると、知人から「クリスマスもお正月もひとりなの? 大丈夫?」と言われて驚いた。ひとりで暮らしている人など、世間にいくらでもいる。クリスマスも正月も、ごく普通の日常でしかない。行事に翻弄されていたらひとり暮らしはやっていけないと、すでにチエミさんはわかっていた。
>外野からの余計な言葉に翻弄される