なぜか人生の節目に元カノと再会してしまいますばったり会い、先にすすめなくなる
<目次>
偶然の「再会」続きで元カノを忘れられない
「少し気持ちが落ち着いてきて、よし、そろそろ彼女を見つけようと思うと、また元カノに偶然、会ってしまう。大都会の東京でどうしてこんなに会うのかとあちらも驚いていますが、そのたびにやはり縁があるのかもしれないと思う自分がいます」タクノリさん(39歳)は苦渋に満ちた表情でそう言った。
高校時代の「憧れの先輩」だった元カノ
元カノのレイカさんは、高校時代のクラブ活動での先輩。1年生のとき彼女はすでに3年生だった。3年生の先輩はまぶしかった。レイカさんは勉強もスポーツもでき、男子たちのマドンナ的存在だった。
「1年生の僕が告白なんかできない。片思いのままいつも彼女を視野に入れていました。でも彼女はサッカー部のキャプテンと付き合っているらしいと噂が流れて……。ショックでしたね」
レイカさんが卒業するとき、彼は個人的に花束を渡して思い切って「好きです」と言った。彼女はにこやかに笑って、「大学で待ってるね」と答えたという。
「その大学が僕にはとてつもなくハードルが高いところで。でも待ってるねという一言を忘れられなかった。だからクラブ活動はそこそこにして、ものすごくちゃんと勉強したんです」
先輩を追いかけ同じ大学へ、再会を果たす
3年生の夏休みは必死で予備校に通った。大学に入ったら何をしたいというわけではなく、ただ彼女のいる大学に入りたかったという。努力のかいあって、彼は合格した。そして新入生としてキャンパスを歩いているときレイカさんを見つけた。
「友だちと歩いていたんですが、レイカ先輩と大きな声で呼んで駆け寄りました。合格したんです、先輩待ってるねって言ってくれたからと言うと、『おめでとう』と。でもだからどうということもなくて。ただ、彼女が所属している同好会に入らないかと言われたので、見学には行きました」
何のサークルかは聞かなかったが部室に行ってみると、なんと政治研究会だった。堅苦しい議論が白熱する中、彼女は堂々と男子学生たちと渡り合っていた。
「かっこよかったです」
ますます惚れた。
大学卒業後に偶然の再会、交際に発展
結局、大学でも、彼女とは「先輩と後輩」のままだった。同好会のメンバーでみんなでどこかに行くことはあったが、ふたりきりのデートは夢のまた夢だった。「彼女は有名企業に就職しました。その後は会うこともなくなっていましたが、僕が就職した年、バッタリ会社近くで会ったんです。彼女の会社も近かった」
ときどきふたりで会うようになった。先輩、後輩として。その後、彼は数年間、地方の営業所勤務となり、27歳のときに戻ってきた。
「連絡してみたら、会おうということになって。会うと雰囲気が変わっていました。問わず語りに、彼女は婚約を解消したところで落ち込んでいた。相手が母親の言いなりすぎてうんざりしたものの、解消してみたら寂しくてたまらない、と。2週間後くらいかな、また会ったら彼女、やたらとお酒をあおって前後不覚になってしまった。ホテルで寝たいというから連れていきましたよ、繁華街のラブホに」
彼は一睡もせず、彼女を見守った。翌朝起きた彼女は彼に抱きついてきた。「タクちゃんはいつも私の味方だったよね、ありがとうね」と言われて、彼の夢がついにかなった。
プロポーズしようと決めた日、突然フラれた
それから付き合うようになったのだが、彼女には振り回されてばかりだった。夜中に呼び出されたりデートをドタキャンされたりは日常茶飯事で、「明日、朝イチで出張になったから車出して空港まで連れてって」と言われることもあった。「僕は召使いのように尽くしました。彼女のことが本当に好きだったから」
2年付き合ったころの彼女の誕生日。プロポーズしようと決めたその日、彼女から「別れたい」と言われた。理由は言わなかったが、あとから彼は二股をかけられていたと知った。
「あんなに好きだったのに。人生最大の挫折でしたね。仕事だけは頑張ろうと思っていたけど、3日も休んでしまいました」
経緯を知っている学生時代の友人が来てくれた。みんな彼が自らの命を絶とうとしているのではないかと心配していたらしい。彼自身、生きていたくないとも感じていた。それでも、時間がたつにつれて彼は自ら前を向けるようになった。
失恋から立ち直った矢先に元カノからの結婚報告
「やっと立ち直ったのが1年後。同じ時期に彼女が『結婚しました』というハガキを送ってきたんですよ。海外の教会での結婚式だったようで、彼女は変わらずきれいでした。それの相手が、二股をかけられていたときの彼ではなく、知り合って半年ほどのスピード婚だと友人に聞かされて、また落ち込んで……」レイカさんはもう結婚したのだ、他の女性と付き合おうと気持ちを切り替えたこともあった。だが、その「他の女性」との初デートに向かった道すがら、彼はばったりレイカさんに会った。地下鉄の中だった。
元カノへの未練を断ち切ったのに、再び偶然の再会
「長年、東京の地下鉄を利用していますが、知り合いに会ったことなんてなかった。それなのに彼女には会ってしまう……」時間があるならお茶を飲もうと誘われ、断り切れなかった。彼は初デートの相手に連絡をしそこなった。そのくらい頭が混乱していた。友人に紹介された相手だっただけに、友人との関係もおかしくなった。
「そうやって僕が新たな一歩を踏み出そうとするたび、レイカに会うんです。何度かそういうことがありました。彼女、その後、子どもを産んだんですが、今も僕の勤務先に近い会社で働いています。ときどき明るい声で『ランチしよう』と連絡してきたりする。もうやめてほしいと思いながら、会えるならと出かけていく自分が恨めしいです」
40歳目前、独身のまま元カノに「支配」され続ける自分
彼はもうじき40歳を迎える。レイカさんの結婚後、ふたりは男女の関係はもっていない。それなのに彼はずっと彼女に「支配」されているのだ。そうすることでしか、彼女とのつながりは持てないことがわかっているから。ただ、それでいいと思っているわけでもない。「誘われても行かなければいい。それだけのことなんですが、それができないから苦しいんです」
彼の深刻な表情が今も脳裏に焼きついている。