相続手続きのための戸籍取得とは?
相続が発生すると、何よりまずは相続人が誰なのかを特定する必要があります。法定相続分、遺留分、相続税の計算なども、相続人が誰なのか、人数は何人かなどが大きく関わってきます。例えば再婚で初婚の時の子がいるか、過去に非嫡出子や養子がいるかなど、相続権がある人を特定するには、「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本」が必要になります。被相続人自身だけでなく、配偶者や親や祖父などの戸籍までさかのぼることで5通くらいになることが多く、これに転籍などがあったりして10通くらいになることも珍しくありません。
これまでの戸籍取得はとても面倒だった
出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえるには、まずは最後の本籍地で最新の戸籍謄本を取ります。本籍地と居住地が同じなら役所窓口に申請することが多いと思います。遠方の場合などは申請用紙を役所のホームページからダウンロード、記載し、定額小為替を入れて郵送で申請が可能です。最新の戸籍謄本を取得したらこれ見て読み解き、一つ前の戸籍を取ります。別の市区町村の場合も多く、再度郵送手続きなどで申請し取得して読み解き、また一つ前の戸籍を取る。これを何度か繰り返し、出生までさかのぼります。かなりの手間と時間がかかり、さらに、本当に出生まで辿り着けたのか、そのうえで相続人は誰なのかを読み解くのはかなりの専門知識が必要かと思われます。
戸籍取得が簡単になる「広域交付制度」
上記のような手間や専門知識が必要となると、自分では戸籍をそろえられず、専門家(司法書士や税理士など)に依頼する人が多かったですが、戸籍法の改正により戸籍取得が簡単になるため、改正後は自分でそろえることが容易になります。具体的には「全国どこの本籍地の戸籍謄本であっても、出生から死亡までの戸籍謄本一式が、最寄りの役所窓口だけで一括で請求できる」ことになり、これにより手間や時間を大幅に減らすことができるようになります。本制度は「広域交付制度」と言い、実施時期は2024年(令和6年)3月1日からスタートとなります。
戸籍の一括請求ができる「広域交付制度」の注意点
戸籍の一括請求で劇的に楽になる「広域交付制度」ですが、以下のような注意点があります。- 2024年(令和6年)3月1日より前の申請の場合は、従来通りの申請方法となります。
- 受付は窓口のみで、郵送手続きは不可です。
- 相続人本人のみの申請となります。専門家や代理人からの申請は不可です。
- 取得できるのは本人および配偶者、直系尊属(父母や祖父母など)、直系卑属(子や孫など)のみで、兄弟姉妹の戸籍謄本等は請求できません。
- 一部の戸籍でまだコンピュータ化されていない場合は従来通りの申請方法となります。
- 取得できるのは「謄本」のみで、「抄本」は従来通りの申請方法となります。
相続が発生すると、悲しんでいる間もなく、さまざまな手続きをしなければなりませんが、まず出だしの戸籍取得でこの難易度ですから、いきなりのハードルの高さで気が滅入ってしまう人も少なくありません。
そのため専門家に依頼することが多かったですが、戸籍法の改正によりかなり楽になります。ただ楽になったのはあくまで戸籍の一括請求で戸籍謄本一式を容易に取得できるところまでですので、そろった戸籍謄本一式を読み解いたり相続人を特定したりするのは、やはり専門家に依頼することになりそうです。
それでは最初から専門家に依頼するのも手ですが、専門家は従来通り一つずつ申請です。ですので「広域交付制度」を利用し自分で一括請求し、戸籍謄本一式を入手したら専門家に全て渡して読み解いてもらうのがよいかもしれません。