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「国産うなぎ」と「中国産うなぎ」の違いって何? 味に差はある? 鰻専門ライターが食べ比べてみた!

中国産の価格の安いうなぎが出回っている昨今、国産のうなぎと中国産のうなぎの違いはどこだろうと思い、食べ比べをしてみることにしました。

山室 賢司

執筆者:山室 賢司

うなぎガイド

 
「国産うなぎ」と「中国産うなぎ」食べ比べ

「国産うなぎ」と「中国産うなぎ」の味に違いはある?

1970年代頃から始まったうなぎの輸入ですが、輸入量も増え続けて、今では中国産の価格の安いうなぎが手に入るようになりました。そこで、国産のうなぎと中国産のうなぎとでは何が違うのだろうかと疑問に思い、中国産のうなぎについても調べてみて、鰻屋さんのご協力のもと、実際に食べ比べをしてみました。

<目次>

中国のうなぎ養殖業とは

うなぎ輸入の専門家の方に中国産の活鰻(かつまん/活きているうなぎ)について、今回いろいろお話を伺ってみました。

そもそも中国のうなぎ養殖業は、日本向けの輸出を目的に、江蘇省を中心にしてうなぎの養殖が始まり、養殖の技術も元々日本で行われていた「露地養殖」の技術がベースとなって、生産されているとのこと。

現在の日本では「ハウス養殖」が主流となりましたが、中国では広大な土地を利用した「露地養殖」が盛んです。飼料原料も日本と同じものを使用していて、日本向けの輸出品なので、日本の規定にあったうなぎを生産し、輸出しているのだそうです。

日本向けのうなぎは、鰻屋さん向けの「活鰻」と、スーパーなどに向けた「加工鰻」では少々違いがあるようで、活鰻は「ニホンウナギ(アンギラ・ジャポニカ種)だけ」ですが、加工鰻では「ニホンウナギ(アンギラ・ジャポニカ種)以外」も扱われているとのこと。
国産鰻と中国産鰻

上が「国産うなぎ」、下が「中国産うなぎ」。見た目には違いはありません
 

「国産」や「中国産」の表示義務は?

中国で「ニホンウナギ(アンギラ・ジャポニカ種)」の稚魚を養殖して日本に輸出すると「中国産うなぎ」ですが、仮に「アメリカウナギ(アンギラ・ロストラータ種)」の稚魚を日本で養殖した場合は「国産うなぎ」になります。ちょっとややこしいですよね。

「原料原産地」においては、鰻屋さんには表示の義務は無いのですが、スーパーなどで販売している「加工品」には表示の義務があります。そして、「原料原産地」は義務なのですが、「種類表示」については、義務ではありません。

水産庁は2013年に「ウナギ(学名Anguilla japonica)」の標準和名が「ウナギ」から「ニホンウナギ」に変更されたことから、消費者への情報提供の充実のために、加工品に種類表示をする場合は「ニホンウナギ」での表示を推奨、各関係団体、都道府県等へ通知を行っているとのこと。

その結果、原料原産地は中国、種類は二ホンウナギという表示になり、流通関係者からは、一般消費者が“日本国内で育てられたうなぎ”と誤解するのではないか?と危惧する声も挙がっているそうです。 

実験!「国産うなぎ」と「中国産うなぎ」の味の違いは分かるのか?

さて、いよいよ実験です。鰻専門店である埼玉県北葛飾郡松伏町の「川昌本店」の飯塚料理長にご協力をいただき、国産と中国産の食べ比べをしてみました。中国産うなぎと国産ブランド「和匠(わしょう)うなぎ」をサイズをそろえて、ご用意いただきました。

国産鰻と中国産鰻

上が「国産うなぎ」、下が「中国産うなぎ」

国産鰻と中国産鰻

左が「国産うなぎ」、右が「中国産うなぎ」

調理中の状態では、見た目には違いはありません。 

「国産うなぎ」と「中国産うなぎ」の食べ比べ

白焼き、蒸し、本焼きの関東風の「蒲焼」の工程で作っていただき、どちらのお重にどちらのうなぎが入っているのか分からない状態で提供してもらいました。

いざ、蓋を開けてみます! 

みなさんは、どちらが国産で、どちらが中国産かお分かりになりますか?

国産鰻と中国産鰻

どちらが「国産うなぎ」で、どちらが「中国産うなぎ」か、分かりますか?

重箱の蓋を開けてみましたが、うなぎ好きが高じて1000軒ほど食べ歩いてきた筆者でも、見た目だけでは、国産と中国産の見分けはつきませんでした。

答えは、写真の左側が「中国産うなぎ」のうな重で、右側が「国産うなぎ」のうな重です。

食感では、どちらも柔らかくトロトロとした関東風の蒲焼です。ほんの少し、うなぎの風味と香りが個人的に好みだなと思ったのは、右側の国産ブランドうなぎでした。

そもそも事前情報としてどちらかが中国産ということを知っており、同時に食べて比較していること、比較対象が「国産ブランドうなぎ」であることで、微妙な味の違いがわかりやすかったのかもしれません。普通は、中国産うなぎと国産うなぎを同時に食べ比べたりしないですからね。

一般的な「国産うなぎ」と「国産ブランドうなぎ」を比較しても若干の風味や肉質の違いがありますから、中国産との違いも土地の生育環境の違いだと思います。そして、食べる側がどんなタイプのうなぎが好みなのか、職人さんがどのような調理をするのかにもよるのだと思います。

うなぎ愛好会Facebookグループで聞いてみた

実は、このテーマで記事を書く前に、筆者が運営管理している会員数2万人超の鰻好きが集まるFacebookグループ「うなぎ愛好会」で、「何も言われずに中国産のうなぎを出されて食べました。あなたは中国産のうなぎだと分かりますか?」という質問でアンケートを取ってみました。

結果は、「中国産だと分かる自信がある」が23%、「たぶん中国産だとは分からない」が50%、「その他」は27%でした。「その他」のなかには、「中国産の特徴を知らない」「おいしくいただければ産地は問わない」などの回答がありました。

結局、国産うなぎと中国産うなぎの違いは?

中国産のうなぎは、実食してみると、国産との違いはほぼ分かりません。うなぎが好きで、食べる機会が多い人には分かるかもしれませんが、年に数回程度食べるという一般的な人にはまったく分からないでしょう。

ご協力いただいた川昌本店の飯塚料理長も言われないで出されたら、判別するのは難しいだろうとおっしゃっていました。筆者がたくさんの鰻屋さんを探訪してきて思うことは、産地にはあまりこだわらず、そのお店の技術やお店との信頼関係のほうが大切なのかもしれないと思いました。

取材協力:川昌本店(埼玉県北葛飾郡松伏町)

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