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約7割が洋式化するも、学校のトイレが「汚い・くさい…」の5K問題から抜けだせない4つの要因

「洋式化」が進んでいるとはいえ、学校では老朽化した時代遅れのトイレが今も多く“現役”として使われている。子どもたちを取り巻くトイレ環境の今を、「学校のトイレ研究会」事務局長の冨岡千花子さんに聞いた。

大楽 眞衣子

執筆者:大楽 眞衣子

子育てガイド

駅や商業施設のトイレはピカピカなのに……

駅や商業施設のトイレはピカピカなのに……

学校のトイレは「5K(汚い・くさい・暗い・怖い・壊れている)」と揶揄されてきた。改修により「洋式化」が少しずつ進んでいるものの、今も多くの学校で時代に取り残されたトイレが“現役”として使われている。

半面、家庭や駅、商業施設のトイレはどんどん清潔になり、自動化され、便利になっている。親世代が育った時代と比べて、学校と家庭のトイレギャップは大きい。

それだけに「学校ではトイレを我慢する」という子どもたちも少なくない。5K問題から抜けだせない要因を「学校のトイレ研究会」事務局長の冨岡千花子さんに聞いた。
 

要因1. 「全洋式化」が急務も、残る和式便器

トイレ関連企業でつくる学校のトイレ研究会の事務局長冨岡千花子さんによると、子どもたちによる日常清掃では、“どうにもならない汚れやにおい”が残ってしまうという。その大きな原因が和式便器の存在だ。

2023年9月、文部科学省が3年ぶりに発表した公立小中学校の洋式化率は68.3%。7年前の調査と比較すると25%もアップした。コロナ禍で感染症対策や衛生性に対する意識が高まったことが追い風になったとみられる。

しかし都道府県によるバラつきは、明確になっている。東京都では82.2%と8割以上が洋式化されている一方、島根県(48.0%)や山口県(47.2%)は半数以下という現状だ。また、洋式化が進んでいるなか、少数の支持の声を受けてあえて一部和式が残されることもあるそうだ。

国は、2025年度までに「洋式化率95%」を目指しているが、まだほど遠いといえる。

学校のトイレで最も汚れがひどいのは、「和式便器まわりの床」と冨岡さんは指摘する。便器の形状から汚れが飛散しやすいからだ。学校トイレの汚れを比較したTOTO総合研究所の調べでは、洋式便器下にくらべて和式便器まわりの方が大腸菌の数が164倍も多かった。

「においが一番強いのは、和式便器まわりと男子用の小便器まわりです。においの元は床やタイルの目地に染み込んだら、なかなか取れないんです。和式をなくすだけでも、においは随分減ると思います。小便器は床から浮いている壁掛けタイプにすれば、掃除がしやすくなってにおいの蓄積が変わります」(冨岡さん)
大腸菌の比較

某公立学校での調査(2012年7月TOTO総合研究所調べ)/学校のトイレ研究会提供

要因2. 「乾式清掃」が正解◎ 悪臭の元凶だった床に水をまく「湿式清掃」

そして、汚れやにおいのもうひとつの元凶となっているのが、誤った清掃方法だ。

昔から当たり前のように行われてきた、水をタイルの床に流してブラシでこすり洗いする清掃方法を「湿式清掃」と呼ぶ。一方、家庭のトイレ清掃と同様に、水をまかずに絞ったモップやぞうきんなどで便器や床を拭く清掃方法を「乾式清掃」と呼ぶ。この「湿式清掃」に大きな問題があるのだ。水をまいてじめじめさせてしまう湿式清掃のアンモニア付着量は、乾式の170倍というデータもある。

冨岡さんによると、トイレの改修をきっかけに「乾式清掃」に変更する学校が近年急増しているという。感染予防の観点からも推奨されている。

「トイレで最も細菌が多いのは、湿式清掃した床です。タイルの床に水をまくときれいになった感覚になりますが、じつは濡れたままの状態では菌が広がって増殖してしまうのです。床が乾燥していることが大切です。正しく掃除した床は、水栓のハンドルより菌が少ないという調査結果もあります」(冨岡さん)
 

要因3. 約30~40年という学校トイレの改修スパン

トイレの老朽化も5K問題を助長している。学校のトイレは20年ごとの改修が理想だが、現実には約30~40年のスパンになっているという。

「学校の先生や自治体に向けて行った私たちの調査では、学校施設で改善が必要と思われる場所の第1位がトイレでした。でも現実には、耐震化や空調設備、照明、ICT化などほかのことへ予算が優先されるケースが多いようです。トイレの改修も進んでいますが、全国には約3万の小中学校があって、大便器だけでも133万個ほどあります。古いものから順に改修していくと、今のペースでは20年ごと改修というサイクルが追いつかないのです。」(冨岡さん)
学校で児童・生徒のために施設改善が必要だと思われる場所

n=103(複数回答)  学校で児童・生徒のために施設改善が必要だと思われる場所(出所:2022年度全国自治体アンケート調査)/学校のトイレ研究会提供

 

要因4. 子ども任せのトイレ清掃→汚れやにおいが蓄積

同研究会が2021年に実施したアンケート調査によると、児童・生徒が日常のトイレ清掃を担当している学校が、全体の8割を占めた。このうち3割の学校は、子どもたちでしか清掃しないという。

毎日15分程度の子どもたちによる「日常清掃」だけでは時間も足りず、使えない洗剤も多いため、取りきれない汚れやにおいが蓄積する。同研究会では、大人も加わった月1回程度の「定期清掃」と、専門業者による年1回程度の「プロ特別清掃」も組み合わせて、メンテナンス体制を整えることを推奨している。

全国的に学校トイレの改修は進んでいるものの、自治体による格差は大きく、まだまだ古いトイレを使う学校も多い。保護者がボランティアでトイレ掃除に入る学校もある。大人たちが手を貸してあげることで、子どもたちのトイレ環境を少しでも改善してあげたい。

【取材協力】学校のトイレ研究会
事務局長 冨岡千花子(とみおか・ちかこ)。清潔で快適な学校トイレを普及させるために、トイレ関連企業が結集して1996年に発足。空間建材・衛生設備・清掃メンテナンスに至るソフト・ハードの両面から調査・研究・啓発活動を重ねている。
https://www.school-toilet.jp/

【参考】
学校のトイレ研究誌26号「学校トイレの挑戦 2023」
学校のトイレ研究誌特別号「感染症対策ブック」
公立学校施設のトイレの状況について(2023年9月文部科学省)
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