大麻草の種子は、大麻取締法の規制対象になる?
2023年12月6日に大麻取締法を改正する法案が国会で可決・成立し、2024年12月12日に実際に施行されました。これにより、これまでの「大麻取締法」(昭和二十三年法律第百二十四号)は、「大麻草の栽培の規制に関する法律」(昭和二十三年法律第百二十四号)に変わりました。またこれと連動して、「麻薬及び向精神薬取締法」をはじめ10を超える法律も改正されることとなりました。
「自分は違法薬物なんかに絶対に手を出さないから関係ない」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、薬物規制については、日本の未来を決める事柄として全国民が正しい知識を備えるべきだと思います。今回は、報道でも誤った解説が見受けられる大麻の規制対象について、なるべくわかりやすく解説したいと思います。
大麻とは何か? 法律から見る定義・規制内容
そもそも「大麻とは何か」を説明できる方は、少ないかもしれません。これまでの「大麻取締法」(昭和二十三年法律第百二十四号)の冒頭には、次のような条文が書かれていました。この条文が意味するところは、「大麻」とは、大麻草の葉、花穂、未熟な茎、根などとそれらを加工した製品のことであり、成熟した茎(樹脂を除く)や種子は「大麻」に該当しないということです。そして、報道でもこの条文だけが参照されて、「大麻草の種子は規制対象外」という説明が見受けられます。先日もあるテレビ番組で、大麻について詳しい専門医と称する方が「種子は大麻取締法の規制対象外」と解説されていたようですが、これは大きな間違いです。第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
「七味唐辛子の中身の「麻の実」が大麻取締法に触れない理由」でふれたように、七味唐辛子に入っている「麻の実」は、まさに大麻草の種子であり、大麻取締法における「大麻」には該当しませんので、「大麻」の対象外であることは間違いありません。しかし、細かいようですが、種子が規制されていないわけではありません。
種子の取り扱いについて、これまでの「大麻取締法」の内容を要約すると、
1. 大麻草の種子を採取するには、都道府県知事から「大麻栽培者」の免許を受けなければならない。
2. みだりに(許可なく)大麻草の栽培や大麻の輸出入を目的として種子を提供したり運搬すると懲役刑に処される。
ということが規定されていました。
また、新たに施行された「大麻草の栽培の規制に関する法律」(昭和二十三年法律第百二十四号)では、「種子」という言葉が50か所以上に記載され、種子の取り扱いが非常に細かく定められています。大麻草の不正な栽培を防ぐため、種子の取り扱いに関する規制がより厳しくなったのです。
「規制」とは、「特定の目的の実現のために、許認可・介入・手続き・禁止などのルールを設け、物事を制限すること」ですから、大麻草の種子が法律で「規制されている」、つまり「規制対象に含まれている」のは紛れもない事実です。
ですから、
「大麻草の種子は法律の規制対象外」
という説明は間違いで、正しくは
「大麻草の種子は法律で取り扱いが規制されているが、大麻には該当しない」
です。