再燃した日銀の利上げ観測。金利上昇で株価が下がる業種は?
ハイテク株は金利上昇になぜ弱い?
金利の上昇で株価が下がる業種は大きく分けて2つあります。1つはPER(株価収益率)が高い企業が多いグロース株。大まかにいえばハイテク株全般が該当します。もう1つは金利の上昇が調達コストアップに直結する不動産などの業種です。ただ、いずれも金利の上昇が必ずしも悪材料ではないともいえます。また、業種のくくりではありませんが、借入金が多くて業績が軟調な企業にとっては経営の悪化に直結します。米国株式市場では金利の上昇とともに、企業名の頭文字を並べてGAFAMと呼ばれる、具体的にはグーグルの親会社アルファベット、スマホのアップル、ネット通販のアマゾンといった株価が軟調に推移しています。これはいずれも成長率が高く、PERが高い銘柄群です。
PERは株価が1株利益の何倍まで買われているかを表す指標です。一方、PERの逆数に株式益利回りという指標もあります。例えば、Aという企業の1株利益が10円で株価が1000円ならPERは100倍(1000÷10)となり、このときの株式益利回りは1%(10÷1000)ということになります。Bという企業の1株利益が10円で株価が100円なら、PERは10倍で、益利回りは10%となる計算です。
非常にざっくりした見方をすれば、仮に債券の長期金利の利回りが5%だった場合、Aという会社は債券に比べて割高、Bは割安と判断することができます。実際は成長性なども加味されます。金利が上昇すればするほど、Aの割高感が強まり、株式を売って債券を買った方が有利という見方になります。これが金利の上昇局面でハイテク株が売られる理屈です。
不動産株は金利上昇になぜ弱い?
また、金利上昇に弱いセクターとしては一般的に不動産が挙げられます。大手の不動産会社は再開発案件を手掛けたり、超高層のオフィスビルを作ったりしています。これらの資金は長期借入金で賄い、案件の完成でテナントなどから回収していくのが通常です。長期金利の上昇は、土地などの資金調達コストの上昇に直結するため、採算の悪化や財務状態のダメージが意識されます。マンション開発などの業者も同様で、こちらは住宅ローン金利の上昇を背景に顧客の購入意欲が減退する可能性もあります。
悪材料ばかりではない日本経済
金額的に大きな買い物である自動車、大型テレビ、家具なども該当するかもしれません。ただし、「金利上昇で株価が上がる業種とは?デフレに苦しんだあの業種が復活か」で述べたとおり、金利の上昇局面ではあってもゼロ金利からの回復局面で、デフレ経済からの正常化過程であるのが日本の状況です。コロナ禍では「鎖国」政策で海外からの入国も制限されていました。長期金利の利回りが10年ぶりの高水準とはいえ、1%にも満たない水準で調達コストの上昇も限定的です。海外からのビジネスマンの回復によるオフィスビル需要増、賃金の上昇による住宅の購入意欲増などを考慮すれば、必ずしも悪材料とばかりはいえないと思います。
仮に住宅ローン金利が毎年0.1%ずつ上がるなら、将来の上昇に備えて今のうちに買おうという消費者もいるでしょう。実際、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>の不動産大手の株価は堅調ですし、マンションなどの野村不動産ホールディングス<3231>、住宅借り上げなどの大東建託<1878>が売られているわけでもありません。
ハイテク株についても毎年30%ずつ利益が拡大しているような成長株であれば、PER50倍だからといって売りの対象になるとは思いません。金利が落ち着いてくる局面では見直される可能性が高いといえます。ロボットなどのFA(工場自動化)やEV(電気自動車)、また今はやりの生成AI(人工知能)関連などは押し目買いが有効かもしれません。