世界同時株安の状況でも買いの日本株はある?(画像はイメージ)
このような世界同時株安といえる状況で、買いの日本株はあるのでしょうか。経済ジャーナリストで株式投資ガイドの和島英樹さんに詳しく解説してもらいました。
株価調整、市場が不安を強める理由
欧米のインフレ長期化で、金利の上昇基調が継続しています。特に米国では金融引き締めの長期化が予想以上で、従来は2024年には大幅に金利が低下するとみられていたのが、直近では利下げ2回分が先延ばしになるとの見方も浮上しています。金利の高止まりが米景気の腰を折ってしまうのではないか、との懸念が株価調整の要因となっています。自動車業界などのストライキも起きています。欧州でもスタグフレーション(不況下の物価高)への警戒感が出ています。市場関係者の中には、現在の長期金利の値動きが、1987年10月のブラックマンデー(世界同時株価崩落)に似ていると指摘する向きもあります。当時も長期金利が高く、株価の割高感が暴落のきっかけになったといわれています。さらに、中国経済の先行きも不安視されているようです。
眠りから覚めた日本経済、PBR1倍割れ大企業に注目
ただ、世界同時株安という表現はやや行き過ぎだと思います。特に日本は底堅いといえます。東京証券取引所のプライム市場の全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は、2023年9月7日に1990年7月以来約33年ぶりの高値を付けています。そこから多少下落しているくらいで、いわば、単なる調整に過ぎません。欧米の株式市場も調整の範囲であり、2008年に起きた世界的な金融システム不安、いわゆるリーマン・ショックなどとは大きく違います。ここで強調したいのは、欧米と日本の経済ステージが違うという点です。欧米がこの1年余りにわたって想定以上のインフレに対峙しているのに対し、日本はデフレという「失われた30年」を経てようやく正常化の道を進んでいる状況です。1990年以降は一時期を除いて世界の株価が上がったのに、日本だけが下げ続けました。このような背景から、仮に今後、海外特に欧米の株価が大幅下落したからといって、日本がお付き合いするとは限らないと考えています。日経平均株価やTOPIXは1989年の高値に向かって上昇基調を継続すると考えます。
物色の中心となるのは東証が要請する「PBR(株価純資産倍率)1倍修正」(=ROE・株主資本利益率=の改善)を進める企業になると思います。PBR1倍以下で、配当利回りが比較的高い日本を代表する企業の一例を挙げれば、金融で三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、MS&AD<8725>、事業会社では日本製鉄<5401>、三菱ケミカルグループ<4188>、ホンダ<7267>、ENEOSホールディングス<5020>などがあります。
時価総額の小さい企業はともかく、日本を代表する各業種のトップ付近企業は、資産効率の改善などでPBRやROEの改善を積極的に進める必要がありそうです。
日本の大手銀行のスーパー定期預金の金利は0.02%ほど。100万円を預けても、年間利息は20円程度に過ぎません。株価の下値不安に乏しい低PBRで、利回りが3%程度あればそれだけで優位性が高いといえそうです。
成長企業のカギは「世界で活躍」にあり!
継続的な成長企業にも注目しておきたいです。日本は1990年以降、経済低迷でGDP(国内総生産)はほぼ横ばいを続け、株価も大きく下落しました。しかし、そうした中でもこれまでに上場来の高値を更新している企業もあります。つまり、日本だけに頼らず世界で活躍する企業です。
生理用品などのユニ・チャーム<8113>、エアコンのダイキン工業<6367>、海外でも住宅を展開する住友林業<1911>、抗がん剤で伸びている第一三共<4568>などが該当します。こうした成長企業をチェックするのもよいでしょう。
ユニ・チャームは日本の高度成長期に売上高を伸ばし、その後は紙おむつや生理用品が普及していない中国やアジアなどの地域でマーケットを開拓しながら成長してきました。ダイキンは技術力に優れた高性能なエアコンを海外企業とのM&A(買収・合併)を通じて普及させています。これらの企業は、日本のバブル崩壊やリーマン・ショックなどの影響もほとんど受けていません。
なお、日立製作所<6501>は今年、1988年の上場来高値を35年ぶりに更新。ホンダも16年ぶりの最高値となっています。
新NISAで株式を購入するポイントは2つ
2024年1月からスタートする新NISAでは、株式を購入できる投資枠として「成長投資枠」が設けられています。成長投資枠を活用するポイントは大きく分けて、(1)配当利回りが高くPBRの低い企業で配当非課税の恩恵を受けて株価のじっくりとした値上がりを狙う(2)成長株に投資して積極的にキャピタルゲイン(売却益)を狙う――の2つがあります。新NISAでは株式をいったん売却しても翌年に投資枠が復活します。現行のNISAでは枠が消滅しますので、この差は極めて大きいといえます。攻めと守りをうまく活かすことが重要となりそうです。