Q. 志望校合格を目指していますが、やる気が出ません。どうすればいいですか?
合格したいのに机に向かってもやる気が出ない……
受験生は志望校合格に向けて頑張っている季節かと思いますが、志望校があっても、勉強のやる気や集中力が続かず、気持ちばかり焦っているという方は少なくないようです。脳のしくみを味方につけて、やる気を出すコツをご紹介します。
Q. 「志望校合格を目指していますが、勉強のやる気が出なくて焦っています。毎日机に座って教科書を開きますが、どうしてもやる気が出なくて、内容が頭に入りません。とにかく手っ取り早く『やる気が出る方法』があるなら知りたいです」
A. 脳の「報酬系」を味方につけましょう。コツは、小さな目標を立ててクリアしていくことです。
何かに取り組むときに、目標をたてることは良いことです。なぜなら、私たちの脳には「プライミング」という無意識の記憶のしくみが備わっており、強く意識しなくても、前に考えたことが、自然とその後の行動に反映され、「進むべき方向」に導かれるという性質があるからです。しかし、さすがにただ願うだけでは、夢が叶う確率は低いですね。本当に受験に成功したいのならば、それなりに勉強する努力も必要です。そのときのカギを握るのは、言うまでもなく「やる気」です。
行動力の源となる「やる気」を生じるのは、「報酬系」という脳のしくみです。具体的には、中脳のある部分が活性化されることで、側坐核という部位でドーパミンが放出されます。特に何かに成功して「やったー!」「よかった!」と感じたときには、ドーパミンがドッと放出され、私たちは「ご褒美(報酬)がもらえた」かのような達成感を覚えるのです。
何か身につけようと練習して上手にできるようになると、喜びを感じて報酬系が働き、さらにやる気がわきます。やる気が出て練習を繰り返せば、結果としてさらに上手になっていきます。仕事の場合も同じです。頑張って良い評価がもらえると、喜びを感じて報酬系が働き、さらに頑張ろうという意欲がわきます。これによって、仕事も好循環が生まれます。このように「報酬系」という脳のしくみによって「やる気のサイクル」がうまく回ると、実にすばらしい効果をもたらしてくれます。これが報酬系の本来あるべき形です。
では、目標をたてているのにやる気が起きない、または続かないという場合、どのようなことが考えられるでしょうか? それは、目標が大きすぎることが原因と思われます。「○○(志望校名)に絶対に合格する!」という大きな目標を立てただけでは、最初だけ「よーし、やるぞ!」とやる気を出したとしても、その大きな目標が達成されるまでは何も報酬効果が得られませんから、やる気が続かなくなるのは当然です。
「やる気のサイクル」を回し続けるためには、できるだけ小さな目標を立ててそれを実際に達成し続けることで、その都度、報酬効果を得ることがポイントです。
登山家が最終的にエベレスト登頂を目標にしていたとしても、いきなりエベレスト山には挑戦しません。近隣の登山から始めて、少しずつ高い山に登り、そのたびに成功体験を重ねていきながら、自信とモチベーションを高め、その結果としてエベレスト山に登れるようになるのです。勉強も同じです。
たとえば、高校に通っていて大学進学を目指しているのであれば、定期試験や模擬試験がありますから、そのときに、「漢字の書き取りは確実に得点する」「苦手な数学で平均点を上回る」「主要3科目で前回より偏差値を上げる」など実現可能そうな目標をたててみてはどうでしょうか。勉強の計画をたてるときも、大きな漠然としたものではなく、「毎日必ず5個ずつ英単語を覚える(それでも一年続ければ2000語近くマスターできます!)」「1週間で1単元ずつ進める」など、より具体的で実現可能なレベルの課題をクリアするようなスケジューリングをした方がよいでしょう。そして、クリアするたびにマス目に色を塗るとか、日めくりカレンダーを破っていくとか、何らかの形でその成果を可視化すると、なお良いでしょう。たとえ小さな目標でも、それが達成されるたびに、報酬系が実際に働いて、次のやる気へとつながります。
大切なのは、小さな成功体験を積み重ねることです。楽しくなりますし、取り組むべきことへの集中力も高まります。ぜひ試してみてください。
また、最後になりますが、高校や大学などの志望校は、受験勉強中は最終目標のように思えるかもしれませんが、長い人生の中ではあくまで「通過点」に過ぎません。たとえ、受からず回り道をしたとしても、その先の目標に到達することはできるのです。「合格しないと終わりだ」などと思いつめず、大きな視点で構えて目の前のことを着実に頑張っていくのが、精神衛生的にもいいように思います。
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