資産運用

新しいNISAってどんな制度? どんなメリットがある?

2024年1月から現在のNISAが大きく変わり、新しいNISAがスタートします。従来のNISAとどう違うのか? そもそもNISAのメリットは何で、そのメリットが改正でどう変わるのかを紹介します。

執筆者:All About 編集部

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NISAは「少額投資非課税制度」といい、投資で得られる売却益や分配金・配当金などに対する税金が非課税になる制度。「少額」とつくだけに、非課税で投資できる金額や期間には一定の限度があり、中所得層が投資で資産を増やすことを助けるために設けられました。

2014年に「一般NISA」が創設され、その後、2018年から「つみたてNISA」が始まって、広く普及してきました。しかし、この2つのNISA制度は2023年で終了し、2024年1月からは新しいNISAに生まれ変わります。

どうしてNISA制度は変わるのか?

当初、2024年からは二階建ての制度に変わる予定でしたが、これがなくなり、新しいNISAは期限のない恒久化された制度として大きく拡充されました。どうしてこのような改正が行われるかといえば、日本の家計の金融資産所得を増やすことが重要であると、政府が考えたからです。

国内の家計における金融資産は総額で2000兆円を超えていますが、その半分以上が現預金となっています。株式・債券・投資信託などへの投資は、保険や年金などの間接金融を含めても250兆円程度にとどまり、欧米などの先進諸国と比べてはるかに少ないのです。

そのためか、過去20年のあいだに家計の金融資産はアメリカで3.4倍、イギリスが2.3倍も増加したのに対し、日本は1.4倍の増加と、見劣りする状況になっています。家計の金融資産の一部がもっと投資に回れば、企業の成長に向けた原資となり、経済が活性化し、それによって家計の金融資産も増えていくという好循環が生まれます。

それを実現するために、国は「資産所得倍増プラン」を掲げ、今後5年間の目標として投資経験者の倍増と、投資(額)の倍増を打ち出し、投資しやすい環境を整備するためにNISA制度の抜本的な拡充と恒久化を決めたのです。

新しいNISAはどのように変わるのか?

まずは2023年までのNISAと、新しいNISAの概要を比べてみてください。
2023年までのNISAと2024年からのNISAの比較/出所:金融庁および国税庁の資料をもとに作成

2023年までのNISAと2024年からのNISAの比較/出所:金融庁および国税庁の資料をもとに作成

今までの「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」となり、株式などにも投資できる「一般NISA」は「成長投資枠」という名称に変わって存続します。

図の通り、新しいNISAの大きな特徴であり、従来との違いは主に5つあります。それぞれのポイント別にみていきましょう。

ポイント1:つみたて&成長投資の2つの枠は併用もできる
2023年までのNISAは、「つみたてNISA」と「一般NISA」を同じ年に同時に利用することはできません。どちらか1つを選んで投資するかたちです。そのため、つみたてNISAを利用している人が株式などにも投資したいと思ったら、次の年につみたてNISAを中断し、一般NISAの口座で株式投資をするか、つみたてNISAを続けながら、株式投資などは別の特定口座か一般口座(=課税口座)で投資するしかありませんでした。

こうしたことから、今までは「つみたてNISA」は20~40代の人が多く、「一般NISA」は50代以上の利用者が大半を占めるという状況になっていました。

しかし、新しいNISAは同じ年であっても、いつでも2つの投資枠を同時に利用することができます。「つみたて投資枠」で投資信託の積立をしながら、「成長投資枠」で株式を購入したり別の投資信託をスポット買いしたり、ということも可能になります。

これによって、どちらの投資枠も年齢に関係なく、資産の状況などに合わせて利用することができるようになります。この違いはとても大きいことを知っておきましょう。

ポイント2:年間に投資できる金額が拡大する
非課税で利用できる年間の投資額も大きくなります。従来の「つみたてNISA」は年40万円で、月々の積立額としては3万3333円が限度と、中途半端な金額でしたが、新しいNISAの「つみたて投資枠」は年間120万円まで。月10万円の積立まで可能になります。「一般NISA」は年120万円だったのが、「成長投資枠」で年240万円までと2倍になります。

さらに、2つの投資枠は同時利用もできるので、両方合わせれば年間で360万円までの投資が可能ということ。この分に対する収益がすべて非課税になります。

ポイント3:非課税で保有できる期間は無期限になる!
従来の「つみたてNISA」は20年間、「一般NISA」は原則5年という期限がありましたが、この期限がなくなるのも、大きな違いです。そもそも投資における売却・換金のタイミングは自分の都合だけでなく、マーケットの状況を見て決めることが大切です。期限が迫ったところで慌てて売却すると、投資の収益が減少したり損失が発生したりすることもあります。

一方、保有期限が切れるまで持ちつづると、期限終了後にNISAの資産は課税口座に移るため、その後に価格が動くと思わぬ損失が出たり、利益に税金がかかったりすることも覚悟しなければなりません。

積立投資で20年あれば、まあまあとはいえ、やはり期限を気にせず、タイミングを見ながら自由にいつでも購入・売却できることは、もっとも喜ぶべきこと。新しいNISAに期限がないというのは、一生、非課税で投資することができる口座を持てるということです。

ポイント4:一生涯で1800万円までの投資が非課税になる
新しいNISAでは、生涯の非課税保有限度額が設定されました。それが、2つの投資枠を合わせて1800万円で、このうち成長投資枠は1200万円になります。成長投資枠で300万円使う予定なら、つみたて投資枠は1500万円までOKで、つみたて投資枠だけで1800万円利用するなど、2つの内訳は変えることもできます。

この限度額は簿価、つまり買い付け時の価格で管理されるため、購入後に価格が上がっても買い付け時の価格で1800万円に達するまで、投資を続けることができます。さらに、途中で売却した資金があれば、その分の空いた枠を翌年以降に再利用することができます。

つみたて投資や成長投資枠で合計800万円まで投資し、その時点の評価額が1000万円になっていた場合、そこから200万円を売却したら、翌年以降に投資できる枠はまだ1200万円あるということです。

そう考えると、1800万円の非課税保有限度額があれば、大半の人は一生、新しいNISA口座だけで投資を続けることができるかもしれません。長い目で見て家計の資産を増やしていくには、新しいNISAを利用しない手はないということです。

ポイント5:対象商品は従来とあまり変わらず、適した商品から選択できる
新しいNISAで投資できる商品は、2023年までのNISAと大きくは変わりません。「つみたて投資枠」は、長期・分散・積立に適した投資信託が対象とされ、約200本程度の投資信託から選べます。「成長投資枠」はそれらに加え、対象となる投資信託の種類や数が増え、株式やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)なども含まれます。

ただし、株式などは整理・監理銘柄が除外され、投資信託も信託期間が20年未満のものや、毎月分配型、デリバディブ取引などを用いたものは対象外になります。この点でも安心といえます。成長投資枠で投資可能な投資信託は投資信託協会で公表され、随時追加されているので確認してください。

どちら枠も、選択可能な商品は豊富ですが、金融機関によっても取扱商品は異なるので、積立・購入する希望の商品があれば、利用する金融機関で買えるかどうか確認してから、新しいNISA口座を開設するのがよいでしょう。

新しいNISAのメリットを生かすには?

NISAのメリットは、冒頭でも説明したように投資で得られる売却益や分配金などの利益に対して、税金がかからないこと。通常なら投資に限らず金融商品で得られる利益からは20.315%の税金が引かれますが、それがゼロになり、利益をそっくり受け取れることです。これは新旧のNISAともに同じ。そのうえで、新しいNISAは紹介した5つのポイントが、プラスアルファのメリットになるということです。

逆に言うと投資による利益が発生しなければ、メリットも得られません。NISAによる損失はないものとされ、通常の課税口座であれば可能になる損益通算(投資の利益と損失を相殺して税負担を減らすこと)もできません。

ですから、大きな利益は狙わずとも、確実に利益が積み上がり、資産を増やしていけるような投資の仕方をすることが大切です。そのためにもリスクを軽減する長期・分散・積立という投資の基本を実行するのがいいでしょう。スポット買いの商品でも、長期的な視点で価格が上昇するような商品・銘柄に投資することが重要です。

また、投資枠が増えたからといって、限度額まで投資する必要はなく、ライフプランと家計の収支を考えて、無理のない投資額で利用することが、一番大切。すぐに使う予定の資金は預貯金で貯め、長く預けておける資金で少しずつ利用することを考えましょう。

記事協力:インタープレス
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