106万円・130万円の壁とは?
106万円・130万円の壁とは、会社員や公務員に扶養されてパートなどで働く配偶者(第3号被保険者)の年収が106万円や130万円以上になると、それまで負担する必要のなかった社会保険料(年金保険料・健康保険料)を自ら負担することになり、配偶者の手取りが減る現象のことです。 詳しく説明すると、扶養されている配偶者が従業員100人超の企業で週20時間以上働き、年収106万円以上になると、扶養を外れ自ら勤め先の厚生年金と健康保険に加入し、保険料を負担することになります。また扶養されている配偶者の勤めている会社の規模にかかわらず、年収が130万円以上になる場合は扶養を外れ、自ら国民年金と国民健康保険に加入し保険料を負担しなければなりません。
そのため106万円の壁や130万円の壁を意識し、働く時間を調整する方も多く、労働現場の人手不足の一因として問題視されています。
106万円の壁への支援強化パッケージとは?
この問題に対し政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。その中の1つである106万円の壁への対応とは、以下のようなものです。- パート・アルバイトの方が年収106万円以上になり、新たに厚生年金や健康保険に加入することになった場合、保険料負担で手取りが減らないような取り組みをした企業に対して労働者1人あたり最長3年間で最大50万円(*)の助成を行う。
- 保険料負担で手取りが減らないような取り組みとは「賃上げ」「労働時間の延長」「社会保険適用促進手当」などを指す。
- 社会保険適用促進手当については保険料を決める際の標準報酬月額の算定対象外とする。
厚生労働省のパンフレットには、パッケージを利用したイメージ図が掲載されています。 例えば年収104万円の方が年収106万円になり、新たに社会保険加入(厚生年金・健康保険)する場合、約16万円の保険料の負担が発生するため、手取りは約90万円になりますが、保険料相当額である16万円を企業が従業員に手当(社会保険適用促進手当)として支給した場合には、手取り収入を減らさない取り組みをしているとして、企業に助成金が支払われます。
またこの社会保険適用促進手当については、従業員負担分の保険料を上限として社会保険料の算定対象外とされるため、本来ならば手当分にかかる企業の社会保険料の負担もなく企業にもメリットがあります。
130万円の壁への支援強化パッケージとは?
年収の壁・支援強化パッケージの130万円の壁への対応は、以下のようなものです。- パート・アルバイトの方が繁忙期に労働時間を延長したなどの理由で、収入が一時的に上がった場合でも、事業主がその旨を証明すれば被扶養者のままでいることができる。
- ただしあくまでも「一時的な事情」として被扶養者認定を行うことから、連続2回(2年)までが上限。
厚生労働省のパンフレットには、130万円の壁への対応へのイメージ図が掲載されています。 例えば令和4年10月時点で年収見込み120万円の方が、繁忙期の労働時間延長で残業代が20万円発生(年収見込み140万円)した場合、一時的な事情として事業主がその旨を証明すれば、令和5年10月の扶養確認時に引き続き被扶養者認定が受けられるようになります。
年収の壁・支援強化パッケージは暫定措置
今回打ち出された「年収の壁・支援強化パッケージ」は、あくまでも暫定的な措置です。106万円への壁への対応は最長3年であり、手当(社会保険適用促進手当)が社会保険料の算定対象外とされるのも2年とされています。また130万円の壁への対応として、年収130万円以上でもかまわないのは連続2回(2年)までです。
パッケージの各期間が過ぎた後の取り組みについては明らかにされておらず、第3号被保険者に対する年金制度の抜本的な改革を行わない限り、106万円・130万円の壁問題の根本的な解決にはならないのではないでしょうか。
まとめ
今回は106万円・130万円の壁問題への対応策として、政府から発表された「年収の壁・支援強化パッケージ」について解説いたしました。記事ではパッケージの概略について解説していますが、詳細はかなり複雑で、対応する企業の関係部署の方はかなり大変かと思います。現場からの問い合わせに応じた追加情報も今後出てくるかと思いますので、常に最新の情報を得るようにしてください。
〈参考〉
・厚生労働省:年収の壁・支援強化パッケージについて