子育て

えっ!?「上履き廃止」の小中学校が増えている?フットケアの専門家もすすめる「一足制」のメリットと壁

東京都内の公立小中学校では、上履きを廃止し「一足制」を導入するところが増えつつあります。しかし全国的には、まだ上履きと土足をわけるのが一般的。導入にはどんなハードルがあるのでしょうか。

古屋 江美子

執筆者:古屋 江美子

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バレエシューズタイプの上履きは、子どもの足の成長に適していない

バレエシューズタイプの上履きは、子どもの足の成長に適していない

昔から日本の多くの子どもが学校で長時間履いている「上履き」。ただ最近、東京都内では上履きを廃止し、校舎内でもそのまま土足にする「一足制」を導入する学校がでてきました。

しかし、全国的な動きにはなっておらず、導入には一定のハードルがあるようです。足育研究会代表・高山かおる先生に、一足制のメリットと導入の壁について話を聞きました。
 

「一足制」の導入、学校視点の懸念は?

病院や商業施設など通常の社会生活では、土足で過ごす場所がほとんどの中、なぜ学校では一足制の導入が進まないのでしょうか。

東京23区では、港区や中野区、台東区をはじめ6区で上履きをなくす一足制の導入実績があり、港区では26校中24校で採用されています(2023年2月末時点・品川区文教委員会資料より)。
 
一般的に一足制のメリットとしては、履き替えの手間や下駄箱スペースの削減、来校者の負担軽減、災害時の安全な避難などが挙げられます。逆にデメリットは、校内が汚れるといった衛生面です。
  
それ以外にも学校視点では、次のような懸念点があるようです(第15回第三中学校・第十中学校統合委員会の要点記録より)。
  • 下駄箱を見ても生徒の登校状況が把握できなくなる
  • 上履きの色で学年を判別できなくなる
  • 室内で靴を履き替える日本の文化を帰国生に伝えるのも教育のひとつという考え
たしかにこういった日々の指導に関わる部分については、新たな工夫が必要になりそうです。 

ちなみに兵庫県神戸市の小中学校は、昔から一足制です。これは外国人居留地があり、洋風文化が身近だったことや敷地の狭さなどが理由だといわれています。
 

 衛生面を気にして、積極的に賛成できない保護者も多い

All About編集部で実施した「学校や園の上履きについてのアンケート」の中で、一足制に対する意見を聞きました。その結果、一足制のメリットは理解しつつも、積極的には賛成できない人が多い印象でした。理由はやはり衛生面です。
 
校舎の床の汚れについての声は、「小学生は平気で床を転げ回るので、衛生的に問題ないのか気になります」「雨の日は登下校でグラウンドを横切る際、ものすごく靴に泥汚れが付きます」など。地方の学校は校庭が土のところが多いですが、都内では人工芝のところもあり、汚れ具合には差が出そうです。

「掃除が大変」だと思うゆえに、「掃除は専門の方に外注してほしい」といったコメントもありました。
 
また、子どもの足の状態も気になるようです。「同じ靴を履き続けると、足が蒸れて菌が繁殖しそう」「足がかゆくならないか心配」という声や、実際に現在子どもが一足制の学校に通っている方の「足が臭くなるのでやめてほしい」という切実な声もありました。

その他、「悪くないと思いますが、上履きに慣れているので違和感があります」という意見も。

一方、賛成の理由で多かったのは、「すぐにサイズが変わる子どもの靴を何足も買わなくてもよくなる」「持ち帰りや洗濯の手間が省けるのでありがたい」といったコスト負担の軽減や利便性向上を歓迎する声です。

ただ一足制といっても、体育館用シューズを別途用意する必要がある学校も多いため、必ずしもコストや手間の負担が劇的に変わるわけではなさそうです。
 

「足育」の観点からは一足制がベター

一足制には、コスト負担の軽減や利便性向上だけでなく、子どもの成長に合った靴を選べるメリットもあります。

「足の成長の観点から見ると、一足制のメリットは大きい」と話すのは、済生会川口総合病院の皮膚科医でフットケア外来を開設し、足育研究会の代表も務める高山かおる先生です。
 
「小学生がよく履いているバレエシューズタイプの上履きは、ぐにゃぐにゃすぎて子どもの活発な動きをサポートできません。大事なかかとの骨をホールドできず、指も曲がるべきところで曲がらない。子どもの骨はやわらかいので変形しやすく、そういう靴を履き続けるのはよくありません。そもそも、バレエシューズタイプの上履きは、戦後1950年代に発売されて以来、ずっと形が変わっていないんですよね。機能が向上するどころか、むしろ安く提供し続けるために、つくりが悪くなっている可能性もあります」

「バレエシューズタイプの上履きを変えたほうがよい」という議論は以前からあり、文科省で答弁がなされたこともあったものの、ほとんど進展がないのが現状だそうです。
個人差が出てしまうことを気にするのは、日本人ならではの国民性?

個人差が出てしまうことを気にするのは、日本人ならではの国民性?

一足制の導入が進まない背景について、高山先生はあくまで個人的な見解として、次のように述べました。

「家の中で靴を脱ぐ文化を持っているところが大きいと思います。また、“みんなと同じがいい”という国民性もあり、個人差が出てしまうことをネガティブに捉えてしまっていることも考えられます」

よく学校制服のよい点として、「貧富の差を感じにくい」といわれることがありますが、同様の考えを上履きに対して持つ人もいるのかもしれません。
 
「それでも子どもの足の健康を考えれば、足に合った靴を選びやすい一足制のほうが望ましいです。しかし、何かきっかけがないと導入は難しいですよね。せめて新設の学校は一足制にするような動きを、できれば国主導で進めてもらえたらよいと思っています」と高山先生。

都市部と地方では環境の違いもあり、長年の習慣を変えるには一定の苦労が伴います。今後、一足制の流れが加速していくかのかどうか、注目したいところです。
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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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