だんだん彼女の臭いが気になる事態に?
しかも彼女はあまりお風呂に入ろうとしなかった。「週に1、2回ですかね、入るのは。僕は毎日、出勤前にシャワーを浴びて、夜も2日に1回は湯船に浸かるんですが、彼女は本当に入ろうとしない。だんだん臭いも気になって、お風呂入ればと言ったら、やはり『うん』と返事をするだけ」
彼女はゲームにはまっていた。だから帰宅してからの時間は、ほとんどゲームに費やすのだ。以前だったら凝った料理も作ってくれたのだが、同棲を始めてからは料理もしなくなっていった。
「僕と一緒に住むために料理で釣ったとしか思えない。僕も我慢しましたよ。だけど一緒に生活するには限度があった。洗濯もめったにしないし、不潔すぎた。同棲3カ月目に入ったところで、もう無理だと彼女に言ったんです」
キレた彼女が300万よこせと口走り…
私を追い出すつもりなら、どうして越して来いなんて言ったのよと彼女は怒鳴った。この怒鳴り声がまたドスが利いていて怖かったと彼は言う。「きみがこんな人だとは思ってなかった。こっちこそだまされたような気持ちだよと言ったら、彼女、いきなりテーブルの上にたまたま置いてあったハサミを投げたんですよ。とっさによけたけど怖かった」
それからことあるごとに話し合いをしようとしたが、彼女は受け入れない。あげく、「出ていけというなら、引っ越し費用と慰謝料をよこせ、全部で300万」と言い出した。
どうしたらいいかわからなくなったタツヤさんは、友人のつてを頼って弁護士に依頼したが、それでも話し合いがつかなかった。
「弁護士から彼女の両親に連絡してもらったんですが、両親でさえ『あの子はもういないものと考えている』と言ったそうです。かつて両親にも迷惑をかけていたのかもしれません。仕事はできるんですよ、彼女。でも根本的なところで何かがおかしい」
いったいどうしたいんだと聞くと、今のままでいいと言う。物件を見つけて初期費用を払うから引っ越してもらいたいと言うと、また物が飛んでくる。警察に相談しても、あまり親身に相談に乗ってはもらえなかった。
「相手は女性なんだからと言うんですが、彼女は力もあるし、なんせ物を投げてくるんだから被害を受けるのはこちらだと言っても、ケガでもしないと被害とはいえないなんて言われて。絶望しましたね。このまま居座られる恐怖感は今も忘れられない」
男性は過呼吸を起こすようになり
彼はストレスが極限に達して、ときどき過呼吸を起こすようになった。これ以上我慢できないと覚悟を決めた。彼に同情した弁護士から親に強硬に言ってもらい、親が迎えに来ることになった。その当日、彼女は姿を消した。よほど親に会いたくない理由があったのだろう。「かわいそうなことをしたとは思いました。派遣の仕事も辞めてしまったし。ご両親には謝られました。絨毯やその他の損害賠償もと申し出てくれたけど、すべて断りました。彼女が出ていってくれさえすればそれでいい、と。来いと言った自分にも責任があると思ったから」
彼女が出ていって1年以上がたち、彼の気持ちもやっと少し落ち着いてきた。最初は絨毯のシミを見ると過呼吸を起こしたこともあった。
「安易に同棲なんてするもんじゃないと思いました。本来なら、もっと一緒に過ごす時間をとったり旅行をしたりして、少しずつ近づいていくべきだったんだと思う。あの頃はそれがなかなかできなかったし、僕自身がとても寂しかったから彼女に飛びついてしまった」
会社に知られたらまずいという思いもあり、彼女とのつきあいは誰にも言っていなかった。だから困ったときも助けを求めようがなかった。
「コロナ禍でなかったら、また違う展開だったかもしれませんが、もう当分、女性はこりごり。今はそんな思いしかありません」
暗い表情のまま、タツヤさんはつぶやいた。