また浮気の虫がうずいているのか
それは夫にとっても傷となった。それ以来、ユイさんは心の中では許してはいないが、家庭内ではうまくやっているように見せかけてきた。「ただ、私の失敗は夫に家事を仕込まなかったことでしょうね。だから夫のいう卒婚に、自分が自分のことをやるという項目はない。自分のことは私にやらせて、外で好きなようにするというだけ。それは卒婚とは言わないと却下しました。『また浮気しているのなら、勝手にやればいいけど、結婚してから得たお金は共有財産だから。何かあればきっちり半分して離婚するから』と言っておきました。夫はおののいたような顔をしていましたね」
おそらく図星だったのだろう。素知らぬ顔をして夫の携帯を確認したら、若い女性に入れあげているようなメッセージのやりとりがあった。
「“頂き女子”のことが話題になっていますが、どうも夫もパパ活されているのかもと思える節がありました。あんまりお金はないから相手も本気ではないようですが、それでもときどき数万円渡している気配があった」
夫婦の預貯金公開を提案したら……
一計を案じたユイさんは、ある日、夫にお互いの預貯金を公開しあおうと提案した。これから老後に向かっての計画をたてなければいけない。子どもたちに迷惑をかけるわけにはいかないでしょう、保険なども見直したほうがいいし、余力があれば家のリフォームも今のうちにしておきたいと、要求を並べ立てた。今までずっと財布は別にしてきて、家計のみ7対3くらいの割合でそれぞれが負担してきたのだが、それも収入に見合っているかどうか再確認したいと提案、これには金融関係に勤める娘にも一肌脱いでもらった。「娘も熱心に、財産の見直しは大事だよと夫を説得してくれた。夫はそれではたと現実に返ったんでしょうか。あるいは逃れられないと思ったのか、娘にだけ通帳その他、全部見せたそうです。娘は『おかあさんには内緒にして、私がうまくやってあげる』と言ったそう。
その結果、『おとうさん、やっぱり誰かにお金を渡してるね。でもつい最近始まったことみたいだから、私が潰しておくから』って。娘は夫から相手のことを聞き出して、二度と関わるなと話をしたそうです。『私とデートしたいって言うから、してやっただけよ。ただであんなおじさんとデートなんかするわけないでしょ』と20代前半の子に凄まれたと笑っていました」
50代夫婦の「卒婚」は実現したのか?
はらわたが煮えくり返るような思いにとらわれたユイさんだったが、離婚しないならここは黙っておいたほうが得策だと娘に言われ、なにごともなかったかのように生活している。「その代わり、本物の卒婚は実現させました。夫の分の家事はいっさいしませんと私が宣言、裏で娘が糸を引いてくれて、夫は渋々ながら了承。私自身も自由を手に入れました。夫はときどき、私の好物を買ってきて気を引こうとしています。多少の罪悪感はあるみたい。財産の見直しはこれから本格的にやりますが、娘曰く、『全部私が見直して、いろいろ提案するから』と。とりあえず夫の秘密を守った形にするようです」
30代の浮気の一件から、夫のことはほとんど信用していないが、この年齢になってもまだ信頼に足る行動ができない夫に、内心、愛想は尽き果てているとユイさんは言う。あとは今後を見すえて、「一番損をしない方法をとる」と決めているそうだ。