子どもより手がかかり、決して「成長も進化もせず」、どんどん寄りかかってくるだけの夫に、離婚の二文字が浮かばない妻はいないのかもしれない。だが実際、ある日突然、夫が卒婚を提案してきたとしたら、妻たちはどう考えるのだろう。
卒婚を提案してきた夫、どうやら浮気中のようだ
「卒婚する?」と言う夫
結婚して28年たつユイさん(55歳)。26歳の長女は同居しているものの、家事も食事のことも自分で行っている。24歳の長男は昨年、転勤のため独立していった。ユイさんはフルタイムの契約社員として働き、3歳年上の夫は65歳の定年までがんばるつもりらしい。「同居している家族3人、全員仕事をしていますから時間もバラバラで、めったに3人が集まることはなくなりました。それならいっそ、夫も食事くらい自分でやってくれればいいんですが、朝も晩も私に作ることを要求してくる。家事もまったくしません」
娘は、「あんなおとうさんとこの先もずっと一緒にいる気?」とたきつけてくるが、さすがに「離婚」という選択肢はないと思っていた。せめて自分のことくらい自分でしてくれればねと、ため息交じりに言うのが常だった。
「ところが今年の初めだったか、夫が突然、『オレらも卒婚という手があるな』と言い出したんですよ。私としては一瞬、ラッキーと思った。じゃあ、もう食事の支度はしなくていいよね、洗濯も自分でやってよねと立て続けに言うと、『え、そういうこと?』と怪訝な顔をしているんです」
夫が望む「卒婚」の条件が怪しい
夫の考える卒婚はどういうものなのかと尋ねてみると、「帰宅が遅くなってもいい」「連絡もせずに外泊可能」「縛られたくない」というものだった。「じゃあ、とりあえず食事の支度はしないからと言ったら、食べるときのみ連絡するという。だったら前日に言ってくれないと困ると言うと、『うーん』と思案顔。なんだか怪しいなと思いますよね、これ」
浮気相手ができたのか、あるいは気になる女性のために時間を気にせず行動したいのかとユイさんは憶測した。
「30代のころ、夫はあからさまに私を裏切ったことがあるんです。今と同じように『本当はまだ家庭に縛られたくない』と言って、幼い子をふたり抱えて奮闘している私を放ったらかしにして帰ってこなくなった。義両親が親身になって助けてくれました。やり方が卑怯だったんです。
会社の後輩女性と親しくなって『みんなには内緒だけど、今、離婚調停中なんだ』とだましてつきあっていた。でもそんなの社内の世間話からすぐわかるでしょ。私も知っている夫の同僚が、『今度遊びに行くよ』と彼女の前で言ってしまったから、全然離婚なんて考えていないことがバレた。彼女はその場で泣きだしてしまったから、夫は何かあるんだろうとさんざん噂されたようです」
泣きながら電話をかけてきた夫の浮気相手に、ユイさんは思わず謝ってしまったという。夫はなけなしの貯金をはたいて彼女に謝罪、口止めをした。彼女は夫にビンタを食らわせて、会社を辞めていった。
>娘の協力のもと調査をし、浮気の証拠をつかんだが……