学資保険は、結局あり?なし?どっち?
――このような意見を、SNSやYouTubeで見かけませんか?
しかし、少し前までは、「結婚して子どもが生まれたら、学資保険に加入するのが一般的」という時代もありました。
なぜ今、「損する」という声が高まっているのでしょうか?
本当に学資保険に入ると損するのか、 貯蓄や家計管理に詳しい貯蓄ガイドの西山美紀さんがお答えします。
そもそも学資保険とは?
「学資保険」とは、子どもの教育資金を準備するための貯蓄型保険です。一般的には、毎月保険料を払っていくと、大学進学時の17歳や18歳に満期保険金を受け取れる仕組みです(途中でお祝い金が出るケースもあります)。
名前の通り「保険」の機能があり、保護者が死亡した場合などは、保険料の支払いが不要になり、決められた時期に満期保険金を受け取れます。
「学資保険は損する」と言われる理由は?
「子どもの教育資金を準備できるなら、よいのでは?」と感じるかもしれませんが、デメリットもいくつかあります。●「戻り率」の数字は、よく考えると低い
お得感があるように見えて、実は「戻り率」が低いことが、SNSやYouTubeでも指摘されています。これは筆者も同感で、注意点としてよくお伝えしています。
例えば「戻り率105%」とあっても、これは、1年間で1.05倍になるのではありません。18年など、長い時間をかけた場合のパーセントなのです。
元本が200万円なら、18年間などの時間をかけて、210万円になるイメージです。
もし、定期預金なら、現在は金利0.2%程度のものもありますので、毎月1万円を金利0.2%の定期預金で積み立てれば、元本216万円が、18年後に約219万円になります。
先ほどの戻り率105%の場合、元本216万円で考えてみると、226万8000円ほどです。
とはいえ、定期預金の方は、これからもずっと金利0.2%のままとは限りません。数年後や10数年後には上がっている可能性があり、それならもっと増えることになります。
貯蓄型保険は、基本的には加入した際に利回りが決まっています。そのため、定期預金の金利が6%前後もあったバブル期など、金利が高い時代には大変重宝されました。しかし現在のように、金利がほぼ0%近くで推移している超低金利時代に入るのは「もったいない」と言えます。
●「インフレ」に弱い
もう一つのデメリットとして、保険は「インフレに弱い」という側面があります。
満期の際に受け取る金額が200万円で、「これで十分だ」と今は思っていても、今後インフレが起きれば、教育費も値上がりして、200万円を受け取っても足りないかもしれません。
お金が必要になる時期が先であればあるほど、インフレリスクを考慮する必要があります。インフレに連動してお金が増えるような投資等も、一部検討する必要があります。
●中途解約で元本割れする可能性大
さらに念頭に起きたいのが、貯蓄型保険は、中途解約をすると元本割れをする可能性が高いことです。
満期の前に急にお金が必要になり、中途解約をしてしまうと、払い込んだお金より少ない金額が戻ってくるケースが非常に多いのです。
「教育資金」という目的で貯めるので、途中で引き出すことはないかもしれませんが、中途解約で元本割れの可能性があることは覚えておく必要があります。
預貯金であれば、途中で引き出しても元本割れにはなりません。
学資保険にメリットはあるの?
では、学資保険はデメリットばかりなのでしょうか。いいえ、筆者はそうは思いません。
筆者は、勉強も兼ねて、子どもの教育費の一部として、子どもの学資保険に入っていて、その実体験をお伝えします。
先ほどお伝えしたデメリットの「あまり増えない」「インフレ時に資産価値が目減りする」という点は、まさにその通りだと感じています。
筆者の場合は、保険料を積み立てではなく、一括で納めたため(その方が利回りが高め)、親に万一のことがあった時に保険料の支払いが不要になるというメリットはありませんが、「教育資金として、少しまとまったお金を確保できている」というメリットは実感しています。
万が一、急に何かで大きなお金が必要になり、自分が持っている資産を使い尽くしたとしても、この学資保険を中途解約しなければ、「子どもが高校3年生のときに、このお金は教育資金として使える」という安心感があります。これは、大きなメリットと言えるでしょう。
結局どうしたらいいの?
ではいったい、子どもの教育費を準備する際には、どうしたらよいのでしょうか。筆者は「合わせ技」をおすすめしています。
教育費は「お金を確実に準備する(大学費用として、高校3年生の夏までが目標)」「インフレにも対応できるようにする」という二つの面で考える必要があります。
一つ目の「お金を確実に準備する」には、金額がある程度読めるもの(預貯金、個人向け国債の変動10年、学資保険)が向いているでしょう。
二つ目の、「インフレにも対応できるようにする」には、つみたてNISA(2024年からは、新NISAのつみたて投資枠)で、コツコツと投資信託を積み立てていく(例えば、世界中の株に分散投資するタイプ等)のがよいでしょう。
特に一つ目の「お金を確実に準備する」については、預貯金の場合は、「つい引き出して住宅資金やそのほかに使ってしまいそう……」という人は、一部の資金を学資保険にして「これは教育費です」とわかる形にしておくのも一案です。
今後金利が上がる可能性を考えると、ネット銀行の定期預金や、個人向け国債の変動10年(金利が上がればこの金利も上がっていくので、超低金利時代の今は、利率が半年ごとに変わる変動型の方が向いている)の方が有利だと考えます。
ただし、簡単に引き出せてしまう側面があるため、「これは教育費専用。それ以外には絶対使わない」と固く決意しましょう。
教育費の一部を「投資」で準備する場合の注意点は?
インフレに対応できるように、教育資金の一部を投資によって準備する場合は、いくつか注意点があります。子どもが高校3年~大学生になるころに、万一相場が大暴落していれば、元本割れの状態で引き出すことになりますので注意が必要です。その際は、他の預貯金などで対応できるように、預貯金等を多めに準備しておく必要があります。
また、相場の波によって一時的に減ることもありますが、途中でやめることなく、むしろ安い時が買い時だととらえて、長く積み立てていきましょう。さらに、うっかり他のこと(住宅関連、旅行、その他)に使ってしまうことのないように、「これは教育費用」と家族で方針をシェアしておくことが大切です。
筆者も、定期預金、個人向け国債の変動10年、学資保険、NISAでの投資信託積み立ての“合わせ技”にしています。
それぞれメリット・デメリットがありますので、お互いを補いあえるように、組み合わせて準備したいですね。