仲良し夫婦に「まさかの坂」
「夫の浮気で私は、心身ともにボロボロになりました。それまで12年間もずっと、仲のいい夫婦として友人知人の間ではいつもからかわれるほどだった。私自身も、夫を誰よりも愛していたし自分の半身だと思うほど好きだった。それなのに夫は私を裏切ったんです。私だけでなく子どもまで」エリさん(42歳)が3歳年上の夫と結婚して12年たった昨年暮れ、いきなり夫の浮気が発覚した。しかもその関係は3年も続いていたのだという。
「相手は夫より5歳年上で、夫の学生時代の先輩の妻でした。彼女が自分の夫に『恋をしていて苦しい』と打ち明けたんだそう。バカですよね。あ、ごめんなさい。今も腹立ちがおさまらなくて」
当初、エリさんは夫が浮気していることも、相手が自分の夫に打ち明けたことから男同士が会って話し合い、殴り合いにまでなったことを知らなかった。
「夫が顔を腫らして帰ってきたのでびっくりしたんですが、そのとき夫は転んだだけだと言い張った。もちろんおかしいなとは思いましたよ」
屈辱的だった浮気相手からの電話
翌日、相手の女性の夫からエリさんに連絡があった。知っているだろうという口ぶりだったが、エリさんはその電話で初めて、夫の浮気を知った。屈辱だったと彼女は言う。さらに夫からは「すべてを捨てて、彼女と人生をやり直す。だから離婚する。家も貯金もすべてエリと子どもにあげるから」と言った。「もうすでに夫の中で答えは出ている。離婚してほしいではなく、離婚すると断言していましたから。呆然として、何も言えませんでした」
夫はそのまま家を出ていった。どうやら相手の夫に訴えられたらしいとか、先方は離婚しないらしいとか、さまざまな情報が共通の友人たちから入ってきた。だが、エリさんは「私は蚊帳の外だから。夫が好きなようにすればいい。夫自身の責任でね」と突き放すような発言を繰り返した。
ひとり息子が冬休みに入ったころ、夫がやってきた。息子は電車を乗り継いで1時間ほどの夫の実家に遊びに行っていた。エリさんも義父母とは仲良くしていた。義父母は離婚が決まったことで心を痛めていたから息子を行かせたのだ。
「もう何も話すことはないけど、きみに最後に謝罪したいと夫が言ってきたんです。その数日前に、夫は息子とふたりきりで外で食事をしながら離婚のことを話した。そのことは私も知っていました。帰宅した息子に『ごめんね』と言ったら、『僕はおとうさんの気持ちがわからない』と涙目になっていた。それを夫に話しました」
夫も一時期より少し気持ちが落ち着いていたのだろう。本当に申し訳ないと頭を下げた。
>荷物をまとめて出ていく晩、夫が信じられない行動に