Q. ジェットコースターに乗った後、乗っているときの感覚が続くのは普通ですか?
遊園地でジェットコースターなどを楽しんだ日。夜になってもまだ乗っているような感覚が続くのはなぜ?
Q. 「遊園地で一日中遊んだ日、夜眠ろうと目をつぶると、まだジェットコースターに乗っているような揺れを感じます。疲れによるめまいか、乗り物酔いかなと思ったのですが、降りてから時間がたっているのに、まだ不思議な感覚が残るのは普通なのでしょうか?」
A. 変化に適応しようとする「仕組み」と、非日常的な記憶の中の「感覚」のせいです。
ジェットコースターに乗った後やその日の夜に起こる不思議な感覚は、流れるプールや波の出るプール、海水浴、船や飛行機などに乗った後などにも、よく起こるものです。理由は2つあります。ひとつは、私たちの体には、常に起こる環境の変化に適応するために、周囲の状態に合わせようとするしくみが備わっているからです。たとえば、春から夏になって急に気温が上がるころは、暑く感じますが、そのうちある程度の暑さには慣れます。逆に夏から秋になるころに少し気温が下がり始めると、肌寒く感じたりします。実際の気温は、春と秋で同じくらいでも、春は暖かく、秋は涼しく感じるのは、こうした体の「慣れ」によるものです。
同じように、乗り物や海水浴などで、体が揺れている時間が長く続くと、体がそれに合わせて変化しようとします。揺れなどを含む平衡感覚は、耳の奥の方の「内耳」で受容された情報が、脳の脳幹、小脳、大脳、視床下部などに送られて処理されることで成り立っていますが、揺れが続くとその状態に合わせようとして平衡感覚に「慣れ」が生じます。そうすると、揺れがない場所や状況に戻ったとしても、「慣れ」がすぐには戻らないので、おかしな感覚が残るのです。
とくに、長い船旅の後に船から下りても揺れる感覚が残る状態は「陸酔い」と呼ばれていますが、普通は数日以内でおさまります。しかし、その状態が1カ月以上も続くようであれば、内耳や脳に障害が起きていることもあり、「下船病」などと呼ばれて区別されます。該当する場合は、神経系の専門医に診てもらいましょう。
もうひとつは、体験した出来事の「記憶」の中に、感覚も含まれるからです。ジェットコースターに乗るなどの体験は、非日常的なものです。「楽しい」「怖い」などの強い感情を伴う記憶として、脳に強く刻み込まれます(詳しくは、「吊り橋効果で記憶力が上がる?強い体験ほど忘れない理由」をお読みください)。そしてその記憶情報の中には「揺れる」という感覚も含まれます。
阪神淡路大震災や東日本大震災などを体験された方の中には、いまだに「ずっと揺れている感じがする」という方もいらっしゃいますし、別の小さな地震が起きた時でも、当時の恐怖がよみがえって揺れを強く感じたり体がすくんでしまう方もいらっしゃるようです。それと似たように、怖いジェットコースターに乗ったという体験と感覚が結びついて記憶されることで、その出来事を思い出すときに一緒に「揺れ」も知覚するにちがいありません。
眠ってからもジェットコースターに乗っている夢をみて、何だか実際に揺れている感じがして目が覚めたことがあるという方もいるかもしれませんが、一時的な記憶の想起に伴って感覚が再現されるのは、異常ではありませんので、心配しなくて大丈夫です。
しかし、長期間にわたって日中もずっとめまいなどのおかしな感覚があるような場合は、強いストレスによって精神不安定に陥っている可能性もあります。その場合は、やはり専門医に診てもらって、リハビリなどを含めた適切な治療を受けるのがいいでしょう。