そこで本稿では、“台風銀座”ともいわれる沖縄で暮らす人たちの、台風の備えなどについてご紹介します。沖縄で台風に遭ったときの対策についても解説していますので、いざというときにお役立てください。
毎年やって来る台風。沖縄の人の備えとは?
台風が接近! まずは買い出しから 「台風が来る!」となったら、まずは買い出しをします。多くの物資が船や飛行機で届く沖縄では、台風後もさまざまなものがしばらく商店の陳列台から消えてしまうことがあります。そのため、そこも見越しての買い出しをします。
おにぎりやパンなど、すぐに食べられるものはもちろん、沖縄の人はツナ缶やソーメンは確実にキープします。台風で停電が発生しても、簡易コンロで簡単に調理できるソーメンチャンプルーは、沖縄の台風食。停電にならなくても、台風のときは家でソーメンチャンプルーを食べるという家庭も珍しくありません。
暴風域に入る前に家を防御! 台風の暴風では、どんな小さなものでも飛ばされれば凶器となります。また、飛ばされたもので窓ガラスが割れれば、家の中は修羅場と化します……。そのため、ベランダや庭など、家の周りにあるものはすべて取り除く、もしくは家の中に入れてしまいます。植木鉢などはいとも簡単に飛ばされますので、「これくらいは大丈夫」という考えは禁物です。物干し台などは飛ばないように倒しておくといいでしょう。網戸も飛ばされることがあるので、外して家に入れておくと安心です。
雨戸がない家なら、窓ガラスが割れて飛び散らないようにガムテープなどで養生します。さらに、いざというときに割れたガラスの代わりにするための段ボールやベニヤ板も備えておくと安心です。雨量が増えると、窓のレールの部分から雨水が入ってきますので、隙間にタオルなどを詰めておきます。
また、台風被害で困るのが、電気と水道が止まることです。そのため、トイレを流すための水をお風呂に貯めておくことを忘れずに。停電時に使用する懐中電灯、電池で動くラジオ、飲み水、携帯電話の充電器などは最低限そろえておきましょう。
台風中に停電になると、クーラーは使用できず窓も開けられないため、とにかく暑い! 停電が長らく続いた2023年8月の台風では、電池で動くポータブル扇風機が「めちゃくちゃ役に立った」という人もいました。クーラーが利用できる車中で過ごしたという人もいましたが、台風の暴風では車も転倒しますので、こちらはあまりおすすめできません。
台風上陸中! 沖縄の家の中では…… 暴風域に入ると、もはやなすすべはありません。電気や水道が使用できているうちに食事などをすませ、あとはゆっくりするだけです。危険なので、決して様子を見るために外出したり、ドアや窓を開けたりすることはしないようにしてください。
また、避難勧告が出ることもありますので、台風の速度や進行方向、被害の状況など、情報収集はしておきましょう。土砂崩れなどが発生すると、ぐっすり寝ている間に最悪な事態に陥っている……ということもありえます。
台風にちなんだ沖縄の都市伝説を検証!
デイゴがきれいに咲いたら台風の当たり年になる?沖縄では「デイゴがきれいに咲くと台風の当たり年になる」という言い伝えがあります。デイゴは4~6月くらいに見頃となりますが、台風とデイゴの咲き具合に関連性はなく、これはいわゆる迷信。沖縄の初夏の風物詩といった感じでしょうか。この時期になると「今年は台風がたくさん来るかもねぇ」などということが話題にあがったりします。
沖縄の人は台風が来たら飲みに行くって本当?
みんながみんなそうではありませんが、沖縄の人が台風の時に飲みに行くというのは、本当です。筆者も経験がありますが、雨が強くて今移動するのは大変そうだというときに、職場の近くの店で待機もかねて、ということもありました。そのときは、台風の目に入るころに(この間だけ風や雨がやみます)店の人が「今のうちに帰る人は帰ったほうがいいよ~」と、声を掛けてくれました。家族が車で迎えに来てくれるのを、店で飲みながら待っている人もいます。
しかしながらこれは、台風の大きさや接近具合によります。毎年いくつもの台風を乗り越えてきた沖縄の人たちは、決して無茶はしません。大きな台風の際はきっちりと備え、仕事も早めに切り上げて家で待機しています。さらに大きな台風が来るときは、ほとんどの店は臨時休業となりますので、わざわざ飲みに行くことはできません。
ユニオンが閉まったらヤバイ?
沖縄には「フレッシュプラザ ユニオン」というスーパーがあります。沖縄で「ユニオン」と呼ばれるこのスーパーは24時間営業の店舗も多く、台風の際は沖縄県民の備えのために、ほかの店舗同様にギリギリまで頑張って営業をしています。そのためか、ユニオンがいつもより早く臨時休業を決定すると「今回の台風はヤバイ」という声が沖縄では飛び交うのです。愛するユニオンを称える意味も込めて、沖縄の台風時のお約束のような話題というところでしょうか。もちろん、ユニオンが無茶をして営業しているという事実はありません!
観光客が沖縄で台風に遭ってしまったら?
観光客が沖縄で台風に遭うと、もうどうすることもできなくなります。宿泊先で待機し、避難が必要なときは宿泊施設の指示に従ってください。飛行機はキャンセルとなりますので、航空会社の案内に従って手続きを行ってください。空港で手続きが必要なこともあり、台風明けの空港はかなり混雑します。早め早めの対応を心がけましょう。
帰りの飛行機がキャンセルになり延泊が必要なのに「宿泊先が見つからない」という場合は、下記に問い合わせを。台風接近時には空港が閉鎖になるため、空港施設内で過ごすというアイデアは現実的ではありません。2023年8月の台風では、市役所がロビーを開放するなどして、観光客を受け入れていました。
・那覇空港観光案内所
・沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合
そのほか、レンタカーの延長が必要な場合も早めにレンタカー会社に連絡を入れてください。また、キャンセルが必要な現地での予約に関しても、必ず連絡を入れるようにしましょう。
なお、筆者の個人的な意見ですが、台風が接近していることが分かっているのであれば、旅程を変更するのが賢明だと思います。たとえ飛行機が飛んで沖縄に到着できたとしても、台風が来れば観光地は臨時休業となります。海になんて近づくこともできません。
また、移動の際に車が風にあおられて横転することもありますので、宿泊先にたどり着けないということも考えられます。また、離島へ船で移動する場合は、台風通過後も波の影響で数日間船が出ないこともあります。いずれにせよ、旅行の計画には多少なりとも影響が生じます。
せっかく沖縄に旅行に来たのにずっと外に出られず、帰りの航空券の振り替えに苦労し、予定期間内に帰宅できない恐れもあります。台風時は、まず身の安全の確保を最優先して、最良の選択をすることをおすすめします。