Q. 「眠らないと死ぬ」って本当ですか?
不眠はさまざまな不調を招きますが、命にかかわるケースはあるのでしょうか?
睡眠不足は体に悪いことはよく知られていますが、眠れないことで命にかかわることはあるのでしょうか? わかりやすく解説します。
「Q. 睡眠不足が続くと、明らかに体調が悪くなります。睡眠時間を削りすぎたり、不眠症状がひどすぎるせいで、命を落とすようなことはあるのでしょうか?」
A. 眠らないと命にかかわります。生きていく上で睡眠は必要不可欠です
ちょっとかわいそうですが、睡眠に関して、ネズミを用いた実験報告があります。ネズミをずっと眠らせない「断眠状態」にするとどうなるかをテストしたところ、断眠開始から2週間足らずで、全ての個体が死亡してしまったそうです。生きていくために睡眠は必要不可欠なのです。人間の場合、長時間眠らないという記録に挑戦した人はいましたが、数日後には耐え切れずに眠ってしまいました。断眠を続けると人間も死んでしまうのかどうかは、実際には不明です。しかし、睡眠時間と寿命の関係を調べた研究データは多数報告されており、それらはほぼ同じく、睡眠時間が短い人は寿命が短い傾向にあるという結果を示しています。
また、睡眠と命に関しては、「睡眠中の代謝率の低い動物ほど寿命が長い」という法則があります。「代謝率が低い」とは、「無駄にエネルギーを消費しない」ということです。しっかり休んでエネルギーを無駄遣いしない方が長生きできるというのは、当たり前のことに思われそうですが、その理由をきちんと説明できる方はあまりいないのではないでしょうか。
実は、睡眠をとることには、エネルギー消費を一時的に減らし、体力を回復・向上するという大きなはたらきがあります。ここでいう「体力」とは、運動をするときの筋力や心肺機能のことではありません。不調に陥ったときに、そこから回復するのに最も重要な「免疫力」のことです。
免疫力の源は、白血球です。白血球は、外部から体内に侵入した細菌・ウイルスなどの異物を排除したり、がん細胞や役目を終えた古い細胞を除去するためにも働いています。そして、白血球が十分に働くためにはエネルギーが必要です。
私たちは生きていくために、毎日食べ物をとりながら呼吸をして、体内でエネルギーを産生していますが、その量には限りがあります。日中頭を使って仕事をしたり、激しい運動をすると、そのエネルギーの大部分が脳や筋肉などで消費されてしまいます。すると、免疫を担当する白血球が使えるエネルギーが足りなくなります。そこで、頭や体の「疲れ」を覚え、眠たくなり自然と休みますね。休むと、体内で産生されるエネルギーの多くを白血球が使えるようになり、その間に「免疫力=体力」が回復するというわけです。
睡眠をとることには大きなメリットがある分、適切な睡眠をとれないと健康に悪影響があり、ひどい場合は命にかかわることも、ぜひ知っていただければと思います。