専業主婦の身なので、夫の言動に反論もできない……
夫には従わなければいけないと思っていた
「うちの母が専業主婦だったんです。いつも父の言うことを素直に聞いて、『ごめんなさい』ばかり言っていた。ああいうふうにはなりたくないと思っていたのに、私自身、結婚したらいつの間にか母と同じようになっていたんですよ」アケミさん(43歳)はそう言う。地方出身の彼女は東京の大学を出て、貿易関係の会社に入社した。そこで知り合ったのが6歳年上の彼。それまで同年代としかつきあったことのなかったアケミさんは、「先輩、かっこいい」と一目惚れした。
「彼も何かとすり寄ってくる私をいいと思ったのか、つきあおうかと言ってくれて。あとから思えば御しやすい女だと思っただけかもしれないんですけどね」
1年半ほどつきあって結婚。彼が32歳、彼女が26歳のときだった。まだ仕事をしたいと思ったが、彼に「当然、仕事は辞めるよね。オレが養ってあげるから」と言われてうなずいてしまった。
「養ってあげるから」という言葉への違和感
「養ってあげるからという言葉に引っかかったけど、彼のことが好きだったから、まあ、それもいいかなと安易に思ってしまったんです」生活が始まると、彼はちょいちょいトゲのある言葉を投げかけてきた。怒って言い返したら「なに怒ってるの?」と言われるような、ささいなことがらばかりだ。
「たとえば夫はお弁当を持っていくんですが、『もう少し手をかけられない? 昼飯だけが楽しみなのにさ』と言う。そこまではいいんですが、『どうせオレを送り出したら寝られるんだから』と続く。最後の一言を言わなければ、じゃあ、明日はもうちょっとがんばるねと言えるのに。人をやる気にさせるのが下手なんですよね」
パート先で仲間が倒れ、救急車に同乗して病院まで行ったことがある。現在17歳になる長女は、当時13歳。帰宅が遅くなると娘に連絡した。夫にもLINEをしたが返事はなかった。結局、20時頃帰宅すると、娘がひとりで食事をしていた。ご飯を炊いたし、お味噌汁もある、ハンバーグも作って10歳の妹に食べさせたという。
「お父さんは1回帰ってきたけど、すぐ出て行ったと娘が言うんですよ。私も娘の作ってくれたご飯を食べていると、夫が戻ってきた。どうして子どもだけにして出て行くのと言ったら、『まっとうなメシが食いたかったから』って。娘の顔色が変わりました。それきり長女は夫と口をきかなくなった。夫もすぐに謝ったんですが、長女はいまだに夫とはほとんど話しません」
娘の心に消えない傷ができたことを、夫はどう思っているのだろうか。
>娘から「自分の人生を生きていない」と言われる