店舗前の街路樹に除草剤がまかれて枯れていた?
中古車販売大手の「ビッグモーター」は2023年7月25日、一連の保険金不正請求問題を受けて記者会見を開きました。会見では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回して車にぶつけるなどして、故意に車体を傷つけて保険金を水増し請求していた件に加えて、ネット上でも話題となっている「店舗前の街路樹に除草剤がまかれて枯れていた」という指摘についても言及がありました。
記者から街路樹に関して質問されると、兼重宏行前社長が「環境整備で……」と言い出したあとすぐに陣内司管理本部長が「報道の内容については認識しておりますが、きちんと調査をさせていただきまして、適切に対処させていただきたい」と遮るようにコメント。
その後、和泉伸二新社長が、環境整備点検において、歩道を含めた店舗の出入口近くに雑草やゴミがあれば取り除くようにしていて、その一環で、除草剤をまいて街路樹に影響を与えたことがあったと見解を述べました。
道路環境の保全等の役割もある「街路樹」。一般的に、無断で枝を切ったり撤去したりした場合の違法性について解説します。
一般的に、器物損壊罪や道路法違反の可能性も
そもそも街路樹とは、道路の構造の保全、安全かつ円滑な道路の交通の確保その他道路の管理上必要な施設として、道路管理者が設置する「道路の附属物」のひとつです。これは、道路法第2条2項2号に規定されています。都市景観を向上させるだけでなく、騒音を和らげる、直射日光を遮ることによって路面の温度を下げる効果があると考えられています。つまり、街路樹は道路管理者が管理する財産のひとつと考えられます。道路管理者が管理する財産である街路樹の枝を無断で切ったり撤去したりするのは、第三者の財産を傷つけているのと同じですから、器物損壊罪(刑法第261条)が成立すると考えられます。
また、道路の附属物である街路樹の枝を勝手に切るとか、撤去するなどして道路の効用を害したり、交通に危険を生じさせたりした場合には道路法違反(道路法101条)となります。
“枝を切るだけ”にとどまるなら実質的な損害は発生していないと考えられますが、勝手に“撤去した”場合には再度植栽する必要が生じますから、損害は具体化しています。その場合には、損害賠償請求されることになるでしょう。
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