失業した時に失業給付等を受け取れる雇用保険。誰が入れるのでしょうか。
雇用保険に加入する会社員などは、失業したときに失業給付等を受け取れるのが大きなメリット。パートの人や高齢者でも雇用保険に加入できますが、その条件は? 新しくできた「マルチジョブホルダー制度」とあわせて確認し、失業時の給付内容もチェックしておきましょう。
雇用保険への加入条件とマルチジョブホルダー制度について
民間の事業所に勤務する人は、一定の条件を満たせば、原則、雇用保険に加入することができます。公務員にはない社会保障で、会社員ならではの特権といえます。加入条件は表のとおりです。 この表にある「マルチジョブホルダー制度」とは、2022年1月にスタートした制度です。複数の事業所に勤務する65歳以上の人が対象で、定年退職後に短時間勤務の仕事に移り、2カ所以上の事業所で働く場合などに該当します。1つの会社では加入条件を満たさなくても、複数の事業所での労働時間を合計して週20時間以上になれば加入できる仕組みです。現在は65歳以上の人も雇用保険の適用対象となっていて、65歳以降も同じ会社で働き続ける場合はもちろん、いったん退職して違う会社に勤務する場合も、条件を満たせば雇用保険に加入できます。さらにマルチジョブホルダー制度を利用するなど、加入するチャンスは増えています。今後は加入条件である、所定労働時間を「週20時間以上」から引き下げる改正も検討され、雇用保険の加入者は拡大する見込みです。
失業時に受け取れる基本手当は64歳までの人
肝心の失業時に受け取れる給付については、退職理由が会社都合か、自己都合かによって大きく異なりますが、もう1つ、退職時の年齢が65歳より前か、後かでも給付金の種類が変わることを知っておきましょう。 まず64歳までの人が失業時に受け取れるのは「失業給付の基本手当」になります。これは退職前の1日当たりの平均賃金(賃金日額)に給付率を掛けて算出した基本手当日額を、所定の日数分受け取れるという仕組み。ただし、失業した理由が倒産や解雇などの会社都合なのか、転職を含めた自己都合退職かによって、支給開始時期や給付日数が異なります。会社都合の場合は給付日数が多く、7日間の待期期間の後、すぐに支給開始となります。しかし自己都合退職では給付日数は少なめで、支給開始は7日間の待期期間から、さらに2カ月後(状況によっては3カ月後)と遅くなります。
基本手当は最低でも90日分。会社都合ではもっと多いことも
たとえば、会社都合で退職を余儀なくされた場合、雇用保険の被保険者期間が1年未満なら給付日数は90日ですが、5年以上10年未満で年齢が30歳以上45歳未満なら180日、被保険者期間が20年以上で年齢が60歳以上65歳未満なら240日と段階的に多くなります。一方で自己都合退職では、年齢に関係なく、被保険者期間が1年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で最大の150日です。
いずれも退職後に勤務先から受け取る離職票などを持参して、居住地を管轄するハローワークで求職の申し込みを行い、受給資格の認定を受けて説明会に参加。その後、4週間に一度の指定された認定日に出向き、求職活動の報告をすることで、基本手当が指定口座に振り込まれます。基本手当は認定日までの28日分ずつ受け取る仕組みです。
1日当たりの基本手当は、退職前180日の1日当たりの平均賃金を基に、60歳未満は50~80%、60~64歳未満は45~80%の給付率をかけて求めます(上限あり)。賃金日額が低かった人は給付率が高く、賃金日額が高かった人は給付率が低くなりますが、28日分ずつ受け取る基本手当で、退職前の給与のほぼ半分以上は保障されると思えば、安心して求職活動に専念できるでしょう。
また、給付日数を残して再就職した場合には、残りの日数に応じて再就職手当が支給されることもあります。さらに、ハローワークの指示で職業訓練を受ける場合、受講期間中は給付日数が延長されることもあります。
65歳以上の人は30日か50日分の金額を一時金で受け取る
65歳以降に退職した人の失業給付は「高年齢求職者給付金」となります。これは上記と同様に退職前の賃金日額から算出した基本手当日額を、まとめて一時金で受け取る仕組み。雇用保険の被保険者期間が6カ月から1年未満の人は30日、1年以上の人は50日分の金額になります。高年齢求職者給付金は、64歳以下の基本手当と比べ、総額では少なくなるため、基本手当を受け取りたければ、65歳になる前に退職することがポイントになります。雇用保険では、65歳の誕生日の前日に65歳に達したものとみなされるため、退職日は65歳の誕生日の2日以上前でなければなりません。65歳定年の会社では退職日を自由に選べないこともありますが、退職日を自分で選べる場合には、余裕をもって65歳になる1カ月くらい前に退職するなど、調節するのもいいかもしれません。
記事協力:インタープレス