お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

44歳会社員、貯金650万円。妻が扶養の範囲内で働いても家計は大丈夫でしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、妻が体調不良で、扶養の範囲内で働くことを考えているという44歳の会社員男性です。妻が働くペースを落とした場合、家計は大丈夫か知りたいとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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妻が扶養の範囲内で働きたいとのことですが家計は大丈夫でしょうか

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、妻が体調不良で、扶養の範囲内で働くことを考えているという44歳の会社員男性です。妻が働くペースを落とした場合、家計は大丈夫か知りたいとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
妻が会社員ではなくなっても大丈夫でしょうか?

妻が会社員ではなくなっても大丈夫でしょうか?


■相談者
たっきーさん
男性/会社員/44歳
東北地方/持ち家(マンション)
 
■家族構成
妻(45歳)、第1子(11歳)
 
■相談内容
深野先生のファンです! 知識や洞察力の深さのみならず、時には温かいお人柄を感じさせる先生の言葉にいつも感嘆しております。
 
さて、今回相談させていただきたいのは、ずばり「妻はいつまでどのくらいのペースで働く必要があるか」です。
 
私自身がたびたび転職や回り道をしてきたため、生活が落ち着き収入も安定してきたのがここ3年ほどです(3年前に新築マンション、昨年、自家用車を購入しました)。そのため、まだ住宅ローンの返済も進まず、貯蓄と投資もそこまではできておりません。
 
恐らくこの調子で夫婦ともに65歳まで(可能であれば70歳まで)働き続け、イレギュラーな出費がなければそこまで問題はないと考えております。
 
ところが最近、妻が体調不良を覚える機会が増え、できれば、そう遠くない先に扶養の範囲内で働きたいとのことです。
 
諸々の支出を見直すのは前提としても、果たして現実的に可能なことかどうか……。もし可能だとしたら、いつからどのくらいのペースの働き方であれば問題がないかご教示いただけると幸いです。
 
何卒よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ
相談者「たっきー」さんの家計収支データ

相談者「たっきー」さんの家計収支データ

■家計収支データ補足
(1)妻の働き方について
現在はフルタイムで週5日平日勤務。社会保険加入。特に大病をしているわけではなく、恐らく更年期障害によるものかと思われます。現時点では、本人は完全休養するまでではない、と申しております。また、特別なスキルを必要とせず供給過多な一般事務の派遣社員のため、年齢的にフルタイムでの就労をいつまでも続けるのは難しいと考えているようです。
 
私は現在の勤務先で65歳まで再雇用で働きたいです。もしかすると70歳までの就労も可能かもしれず、その場合は70歳まで働きたいと考えております。
 
(2)ボーナスの使い道について
貯金40万円、お小遣い20万円、固定資産税12万円、車両関係(年払保険料など)13万円、旅行などレジャー20万円。
 
(3)住居費について
住宅ローン6万4000円/月(変動金利1.175%、残返済期間32年、残債2000万円)、管理費+修繕積立金1万9000円/月(インターネット利用料込)。団体信用生命保険に加入しています。

(4)車両費について
ガソリン代4000円、駐車場代1万3000円。昨年、新車で普通小型車を購入。8年ごとの買い換えを予定。予算は200万円。
 
(5)教育費について
習い事1万円、塾代2万5000円、学校(公立)諸費用5000円。
 
(6)加入している保険について
本人/
・定期保険(65歳まで払込み、死亡・三大疾病時1000万円、死亡後妻65歳まで10万円/月)=毎月の保険料1万7000円
・がん保険(低解約返戻金型終身タイプ、医療特約付き、がん診断時100万円、手術給付金20万円、入院給付金日額1万円、がん以外5000円)=毎月の保険料4000円
 
妻/
・医療共済(入院日額1万円、手術6万円、通院日額2000円、死亡・重度障害50万円)=毎月の保険料2300円
・住宅ローンの団信に女性特有のがん(乳がん・卵巣がん・子宮がん等)に対する保障(一時金100万円)が付加されています。
 
子ども/
学資保険(子ども17歳満期、100万円給付)=保険料払い済み
 
(7)子どもの進路について
公立中学・公立高校・国立大学への進学を希望するが、もし本人が望めば私立高校・関東私立理系大学まで対応したい。
 
(8)その他
・60歳定年で退職金は500万円ほど。以後65歳までは再雇用あり。
・現在70代の母から、将来的に1000万円ほど遺産相続の可能性あり。
・国民年金の未納付期間が2年間あり。
 
(9)貯蓄と投資について
普通預金での貯蓄が7万円、NISAで3万3333円を積み立て投資しています。
 
(10)家計収支の差額について
普通預金は特に先取り貯蓄をしているわけではなく、この2年間の収支から平均額を記載しております。
 
(11)公的年金について
年額165万円(月額13万7000円)です。
妻は月額9万4000円
 
アドバイス1 妻の働き方が変わるなら、家計の見直しが必要に
アドバイス2 子どもの教育費で2000万円必要。老後資金に不安は残る
アドバイス3 住宅ローンを完済するまで働き、公的年金の繰り下げも検討を

アドバイス1 妻の働き方が変わるなら、家計の見直しが必要に

ご相談のメインである「妻はいつまでどのくらいのペースで働く必要があるか」についてアドバイスする前に、家計で見直しが必要な点について述べます。
 
現状の家計は、おおむね無駄がありません。ただし、妻が扶養の範囲内での働き方に変わるとなると、ご相談者の保険は見直しが必要です。住宅ローンに付帯されている団体信用生命保険で住宅費については問題ありませんが、万が一の時の生活費を補うことはできません。現在の保険では、少し保障が足りません。また現状の保険は、やや保険料が割高になっています。

死亡保障1500万円、保険期間は65歳までの20年間。通販型の割安な定期保険で加入し直してください。男性で44歳でしたら保険料は6000円ほど。さらに、がん保険にこだわりがなければ、入院日額5000円の医療保険で十分です。妻が加入している医療共済と同じでも構いません。がん保険は妻と同じ共済に加入すれば2300円、合計8500円ほど。現在の保険料2万1000円から1万2500円を浮かすことができます。
 
また、妻が扶養の範囲内での働き方になった際には、食費と小遣いを調整して1万7500円を削減してください。これで全体として3万円の削減になります。

アドバイス2 子どもの教育費で2000万円必要。老後資金に不安は残る

さて、今すぐに妻が働き方を変えて、収入が現状の半分8万円になったとします。給与収入は2人で38万円、支出は32万7000円。差し引き5万3000円が毎月の貯蓄額となります。年間で63万6000円。これにボーナスから61万4000円貯蓄できるとすると、年間で125万円になります。
 
ご相談者が60歳になるまでの16年間で2000万円貯蓄ができます。これに現在の貯蓄額650万円を加えると2650万円です。
 
この間、教育費として、1800万円から2000万円が必要になります。具体的には、私立高校、私立理系大学を念頭に考えると、学費で1200万円ほど必要になります。もしも仕送りが必要になった場合、年間150万円として4年間で600万円になります。高校大学も国公立への進学で、自宅から通えるのであれば、教育費は600万円程度で収まるでしょう。受験にあたって塾代も必要になると考えると、合計で1800万から2000万円は必要となります。

先に計算した2650万円から2000万円を差し引くと、残りは650万円です。教育費のほか、車の買い換えも予定していますので、厳しいようですが、60歳時点で貯蓄はほぼ底をついてしまいます。60歳時点での手元資金は、退職金の500万円と学資保険の満期金100万円、合わせて600万円です。
 
今現在、家計支出の中に教育費として4万円計上されています。先の計算で一括2000万円を計上しましたので、この分は使わなかったこととして貯蓄に加えることができます。毎月4万円で年間48万円、16年分として768万円です。都合60歳時点で手元に残るのは1368万円。約1300万円 ということになります。これが、夫婦2人の老後資金のベースとなり、やや不安が残ってしまうかもしれません。
 
もし、妻が今すぐ働き方を変えるのではなく、5年は現状維持で、その後、扶養の範囲内の働き方になるとした場合、年間60万円、5年間で300万円は貯蓄に上乗せすることができます。ただ現状としては、早い段階で働き方を変えたほうが体調を悪化させないで済むと思いますので、無理に働き続けるのは賢明ではありません。

アドバイス3 住宅ローンを完済するまで働き、公的年金の繰り下げも検討を

問題として残るのは住宅ローンです。ご相談者が74歳まで返済が続きます。ご相談者は60歳以降も再雇用で働けるということですし、場合によっては70歳までの就労が可能かもしれないということ。60歳時点での金融資産が1300万円ということを考えると、住宅ローンの繰り上げ返済は難しく、74歳まで返済を続けなければいけません。
 
子どもが大学を卒業すれば生活費は一段と削減することができます。毎月の支出を28万円程度に収めることができれば年間で336万円。約340万円に収まります。60歳以降も夫婦2人で340万円の収入を得られるような働き方ができれば、貯蓄を取り崩すことなく生活費を賄うことができます。
 
現時点での公的年金の見込額は夫婦2人で約23万円ですが、65歳の段階ではおそらく25万円程度にはなっているでしょう。もしも65歳以降も働けるようでしたら、年金の繰り下げを考えてください。70歳まで繰り下げた場合、年金額は35万5000円まで増やすことができます。おそらく手取りは30万円程度になりますが、70歳以降の生活は、年金だけで賄うことができるでしょう。74歳でローンを完済できればこれ以降の生活はぐっと楽になります。
 
妻の体調が回復して、フルタイムとは言わずとも、もう少し収入を増やすことができるようでしたら、将来の老後資金への不安は軽減できます。また、子どもの進路次第では教育費を減らすことができ、その分は夫婦の老後資金や住宅ローンの繰り上げ返済に充てることもできます。子どもの大学が決まったら、もう一度ご相談をお寄せください。その先の選択肢は変わってきます。その時の資産状況でアドバイスの内容も変わってきますので、今回お伝えしたことがすべてではありません。
 
最後に貯蓄の仕方ですが、児童手当も含め、毎月決まった額を普通預金口座から別の口座に移し替えて、確実に貯蓄するようにしてください。先取り貯蓄をしていない、ということですが、この先の貯蓄はすべて子どもの教育資金になることを考えると、確実に普通預金口座とは切り離して先取りで貯蓄することが非常に大事です。
 
まずは、妻の体調を整えることを優先してくださいね。
 

相談者「たっきー」さんから寄せられた感想

せんえつながら、まさに期待していた深野先生のアドバイスそのもので感無量です。現時点では目先のことで特に困ることなく、根拠なく楽観的になっていたため、早めに相談させていただき本当に良かったです。この先も夫婦で協力しなければ現状維持さえままならないことがよく理解できました。まずは妻の体調を最優先にして生活を再設計していこうと思います。

特に生命保険・医療保険の見直しと先取り貯蓄についてはまったく意識していなかったため、これはすぐに着手します。そもそも貯蓄開始も住宅ローンを組んだのも年齢が遅く、子どもの進路によって老後資金が大きく変わることは自明でしたね……。ぜひ、進路が決まった際にはあらためて相談させていただければ幸いです。重ね重ね、この度はありがとうございました!

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子
 
 
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