話し合おうにも「あなたにはわからない」と言うばかり
子どもが産まれてから妻は変わった
子どもができると、多くの女性たちは「24時間母でいること」が求められる。小さな命を守るために自らその役割に埋没していく女性もいるだろう。「それはわかります。僕だって、最初はこんな小さな命が大きくなっていくんだろうかと不安に襲われたことがある。あのころはそういう気持ちを共有できたんです、妻と」
そう言うのはタダシさん(40歳)だ。35歳のとき3歳年下の女性と結婚し、今は3歳になるひとり息子の子育てと家事に奮闘中である。出産後、復職するはずだった妻は「気が変わった」と退職した。子どものために仕事より母でいることを選んだのだ。
「生活は苦しくなるけど、それもしかたがないと思っていました。でも妻は、自分が望んだ生活になったのに文句ばかり言うようになった。妊娠しても仕事を懸命にがんばっていたころは、愚痴ひとつこぼさなかったのに、別人のように変わってしまったんです」
子育てはある意味で、仕事よりむずかしいかもしれない。自分の思い通りにいかないことが多すぎるからだ。
「家に帰っても食事がないので、ほとんど帰宅後、僕が作っていました。子どもの離乳食が始まると、離乳食は一生懸命作っていました」
彼は心身ともに過酷な仕事に就いている。残業も少なくないから、慣れてくると作り置きの惣菜なども用意するようになった。
「僕自身、ギリギリでしたよ。家事をやって仕事に行って、残業して帰ってきてまた家事をして。たまの休みには妻が出かけてしまい、1日中、子どものめんどうをみることもよくありました。一度きちんと話し合わなければと思っていましたが、妻と話そうとすると『私、もうストレスだらけなの。むずかしい話はしないで』と言われました」
過労でタダシさんが倒れたのは、息子が2歳になったころだ。数日間入院し、退院後、「どちらが体を壊してもいけないから、ちゃんと話そう」と妻に言った。妻は「私の大変さはあなたにはわからない。入院したからって自分だけ大変だと思わないで」とつぶやいた。
「『同じ言葉を言いたいよ。僕の大変さはきみにはわからない』と僕も言いました。だからこそ家事や育児の分担も含めて話し合おうと言ったんですが、妻は息子を連れて、ぷいと実家に戻ってしまいました」
妻の実家は飛行機で移動する距離。すぐには追うことができなかった。
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