Q. 水分補給が大切と聞きますが、毎日2リットル以上は飲むべきでしょうか?
不足すると命にかかわる水。一日に必要な量の目安は?
Q. 「熱中症予防だけでなく、健康のためにも水はしっかり飲んだ方がいいと聞きました。目安として、毎日2リットル以上は飲んだほうがいいのでしょうか?」
A. 水分補給は大切ですが、必要量は人それぞれです
私たち人間の体のおよそ60%は水でできています。血液の90%は水です。少しでも水分が減って血液の流れが悪くなる(いわゆる“ドロドロ”の状態になる)と、命に関わることもあります。脳も水分量が多く、80%が水です。脳には脳室と呼ばれる洞窟のような空間があり、その中を脳脊髄液と呼ばれる無色透明な液体が流れていて、酸素や栄養分が絶え間なく供給されています。そのため少しでも水分が減ってしまうと、脳が正常に機能しなくなります。とにかく命を守るためには、水が絶対に必要なのです。一方で、私たちは、老廃物などを体外に出すために腎臓で血液をろ過して尿を作っては排泄しますし、暑くなると体温を下げるために汗をかきます。そのため、常に水分が失われています。ですから、体の水分量を一定に保つためには、水を飲むなどして失われた分を補うことが必要です。
では、1日にどれくらい水を飲めばいいのでしょうか。「1日2リットル以上を目安に」と言われることが多いようですが、これは誤りです。
体外に出ていく水分の大部分は尿です。私たちが1日に出す尿の量は2リットルくらいですから、それに相当する水を補う必要があります。しかし、普通に食事をするだけでも、食べ物から1リットルくらいの水分がとれます。とくに和食は水分が豊富です。残り1リットルくらいを飲み水として補えればいいでしょう。ただし、体が大きい人、夏場の暑い日、運動したときなどは1リットルでは足りませんから、その分は考える必要があります。詳しくは「Q. 水の飲み過ぎは体に悪い?過剰な水分補給は腎臓に負担になりますか?」で解説しますが、水分は多くとればいいというものでもありません。
健康を損なわないように水分を上手に補給するコツは、私たちの体に備わった「センサー」の役割を意識することです。
私たちの体には、体内水分量の変化を敏感に察知するセンサーが脳の中に備わっています。詳しくは「のどの渇きや尿の再利用…体内の水分量を守る視床下部のしくみ」をご覧ください。この仕組みのおかげで、ちょっと汗をかいて、体重の1%程度の水分が失われるだけでも、私たちは「のどが渇いた」と感じるようになっています。最近は熱中症予防の意識も高まり、「のどの渇きを感じる前に水分補給することが大切」といわれたりもしていますが、知覚機能に問題がない健康な人なら、実際にそこまで水分不足を心配する必要はありません。「のどが渇いた」と感じたときに、その体の感覚を逃さずに、水を飲めばいいのです。水の飲み過ぎも同じようにセンサーが教えてくれるので、「のどが渇いたか、もう水は飲みたくないか」の感覚が水分摂取の適切な目安といえます。
健康に問題がないのであれば、「〇リットルの水を飲まなければならない」と考えるのではなく、体に備わったセンサーの働きを常に意識して、「のどの渇きを感じたときにこまめに水を飲む」という基本的なことを実行してください。水分不足も水の過剰摂取も、同時に防ぐことができます。