人間関係

定年後「いらない人」になった60歳の嫉妬。家庭以外の居場所を楽しむ妻と、家庭しかない自分(2ページ目)

定年後、自分が「いらない人」のような気がしてきた……そう感じる男性は少なくない。会社では、自分のことを「あの嘱託の人」という声も聞こえてくる。せめて名前ぐらい覚えてほしいと思う一方で、若いころの自分もそうだったと苦笑いするのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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妻としみじみ話をしたいだけなのに

妻には自分しかいない。自分を頼って生きている。夫たちの中にはそう思いたい人も多いのかもしれない。だが妻は、夫の知らないところできちんと自分の社会を築いてきたのだ。仕事でしか自分を研鑽できなかった夫に比べ、妻たちは仕事やご近所、ママ友など付き合う人たちの幅が広い。いろいろな人を見ながら自分を振り返り、さまざまな環境に適応しながら生きてきた。その中で自分を構築し、友人を作り、「家庭以外の居場所」を持っているのだ。

「妻の世界が思ったより広いことに初めて気づきました。確かにそれはちょっと僕としては意外だったし、羨ましさもある。僕より他の人と一緒にいるほうが楽しそうだし。でもそれは男のプライドに賭けて言えない」

結果、ついいじけたような態度をとってしまうようだ。もちろん、タケヒコさんはそういうことも自覚している。その上であえて、もう少しだけ優しくしてもらいたい、ずっと会社に束縛され支配されてきた男の人生もわかってもらいたいと思っているのだろう。

「妻が自由に自分の人生を生きられるのも、ある意味では僕が必死に働いてきたからですよね。身勝手じゃないかという気持ちもあります。妻に言わせれば、その分、自分はキャリアを諦めたということなんでしょうけど……。そういう話もしみじみとしてみたいんですよ、共に歩いてきた人生を振り返りたい。でも妻にはまだそんな気持ちはさらさらないようです。『私は過去じゃなくて、今を生きてるの』と言われてしまいました」

彼女の言い分を否定する女性は少ないのではないだろうか。今と未来に希望を持ちながら生きていったほうが前向きなのだから。

「そうですよね、僕が狭量なんだとは思うんです。特に最近、後ろばかり振り返っている。同い年なのに妻は先しか見てない。いつの間にか、妻のことがわからなくなっていました。今後、どう向き合っていったらいいのか……。『何か新しいことを始めたほうがいいよ』と妻に言われました」

そう、新しいことを始めると新しい世界が開ける。同い年の妻は、そうやって自分の世界を作ってきたのだから。
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