人間関係

40歳過ぎの「こどおじ」が子ども部屋を出るとき。実家暮らしの兄から憑き物が落ちた出来事

世話を焼いてくれる母とそれに甘え続けて実家暮らしを続けた兄。しかし、母が亡くなり父も地元に帰郷。独立せざるをえなくなった。母への依存から解放され自活するようになると、兄の様子に大きな変化が……

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「子ども部屋おじさん」は、中年と言われる年齢になっても実家の子ども部屋で暮らす男性を揶揄する言い方だが、その背景にはさまざまな問題が見え隠れしている。

非正規雇用で収入が少なく、自立したくてもできないケースもあるし、介護が必要な親がいて出ていけないケースもある。もちろん、「実家がいちばん居心地がいい」から出ていかないことも……。後者の場合は母親との密着関係も指摘されるところだろう。
なかば強制的に独立した兄だったが……

なかば強制的に独立した兄だったが……

母と兄は「共依存」だった

「うちの兄が完全に“こどおじ”でしたね」

そういうのはホナミさん(39歳)だ。4歳違いの兄は大学を出て就職しても実家から会社に通っていた。実家が都内だったため、わざわざひとり暮らしをする必要もないと判断したらしい。兄を溺愛していた母も、それが当然のように朝になると兄を起こし、洗濯から食事のしたくまでめんどうを見ていた。

「逆に私は、自分に収入があったらひとりで暮らしたいと思っていたから、就職と同時に家を出ました。私が独立してすぐ、兄は会社を辞めました。母によれば『人間関係で傷ついて、あまりにもかわいそうだった。しばらく家でのんびりさせる』って。母の愛情が兄をダメにすると思ったし、兄にも直接、そう言いましたが聞く耳をもたなかったんです」

それ以来、兄は本格的に就職する気をなくしたようで、アルバイトをしながら好きな声優の推し活に精を出していた。父は兄に「きちんと就職して自活しろ」とさんざん言っていたが、そのたびに母が「精神的におかしくなるくらいなら就職しなくてもいい」と庇っていた。

「私はたまに父と外で食事をすることがありましたが、父は嘆いていましたね。『どうしてあいつはあんなに弱いのか』と。結局、いつも母が防護壁になってくれているから自分で闘わずに大きくなっただけ。私がそう言うと父は『共依存というやつか』と。父もいろいろ勉強していたみたいです」

兄は母を表だって頼っているようには見えないが、実は母がすべて先回りして世話を焼いている。兄が望むようにお膳立てするのが母の生きがいであり、それを仕方なく受け入れているように見せるのが兄の依存だった。

>独立した兄の変わりように驚く
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