Q. 大麻と麻薬は別のものだと聞きました。本当でしょうか?

【薬学博士・麻薬研究者が解説】大麻には「麻」という字が含まれるためか、「大麻=麻薬」だと思っている人は少なくないようです。しかし、現在の法律では大麻と麻薬は全く別のものと規定されています。ただ最近議論された法律改正によって、その区別も変わります。それぞれの法律も含めて、違いをわかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q.  「大麻は麻薬ではない」って本当ですか?

大麻は麻薬ではない?

大麻は麻薬ではない?


大麻と聞くと、「麻薬」と思う人は少なくないと思います。「麻薬の大麻」「大麻の麻薬成分」と聞いても、違和感がないかもしれませんね。実際のところをわかりやすく解説します。

Q. 「ずっと『大麻=麻薬』だと思っていたのですが、麻薬は別のものだという話を聞きました。本当なのでしょうか?」
 

「麻薬及び向精神薬取締法」で規定された薬物が麻薬です。現在、大麻は別の法律で規制されているので、麻薬ではありません。

みなさんは、何となく危ないイメージがある薬のことをすべて「麻薬」と呼んでいませんか。それは誤りです。

「麻薬」は、依存性があり乱用すると健康を害するだけでなく社会的にも悪影響があるために法律で規制する必要があると判断される薬物の分類の一つであり、正式には、「麻薬及び向精神薬取締法」という法律で定められた麻薬のリストに掲げられている薬物のみを指します。法律に掲げられていなければ、麻薬には該当しません。

「大麻」は、まったく別の法律である「大麻取締法」で規制されており、大麻草及びその製品(ただし樹脂以外の成熟した茎や種子及びその製品を除く)のことです。大麻草の葉や花を加工して作られる乾燥大麻だけでなく、そこから抽出・精製されたテトラヒドロカンナビノール(THC)などの薬物も「大麻」に該当します。つまり、大麻は、麻薬ではありませんから、「麻薬の大麻」というものは存在しません。「大麻の麻薬成分」という言い回しが用いられることもありますが、これも厳密には正しくありません。報道などでも誤った表現が使われていることがありますが、正しい理解の妨げになりますので、注意が必要です。

ただ最近、2023年12月6日に、現在の大麻取締法を改正する法案が国会(参議院本会議)で可決・成立しました。これにより、近いうちに大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」(昭和23年7月10日法律第124号)に変わり、「大麻」の定義が「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く。)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く。)」と変わる見込みです。さらに、これと連動して、「麻薬及び向精神薬取締法」も改正され、その中で「麻薬」の定義が「別表第一に掲げる物及び大麻」となる予定です。これらの法律が施行されると、「麻薬の大麻」、「大麻の麻薬成分」と言っても間違いではなくなることを申し添えておきます。

 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます