「株式市場を見渡すと、お祭りのように騒がれている会社があります。いわゆる、『テーマ株』という銘柄です。お祭り好きな私としては、テーマ株を買うと儲かりそうだと思い、ワクワクします。中原さんから見て、テーマ株を買うのはよい判断でしょうか?」
今回は、この質問にお答えします。
そもそも、テーマ株とは?
本題へ移る前に。そもそも「テーマ株って何?」という方もいるでしょう。まずは、ここから説明します。テーマ株というのは、最近話題になっているテーマ(業種、業界)に関連する株のことを指します。
たとえば、2023年に入ってからChat-GPTという「人間と自然な対話形式でチャットができるAI」が注目されています。Chat-GPTはいわゆる「生成AI」と呼ばれていて、関連する株も注目されています。具体的な会社を挙げると、対話型AI「SyncLect(シンクレクト)」を提供しているヘッドウォータースという会社の株が人気です。
ヘッドウォータースの株価は、2023年初には3485円でしたが、2023年4月半ばには1万8440円になりました。半年も経たずに5倍以上に上がりました。驚異的なリターンです。
これまで上がった株≠これから上がる株
さて、こんな話をすると、いかにもテーマ株への投資が「儲かりそう」に見えてきます。果たして、テーマ株への投資は、儲かるのでしょうか?ずばり、筆者の答えは「正しい方法で投資をすれば儲かるし、やり方を間違えれば損をする」です。
テーマ株は、短期間で大儲けするにはよい投資先かもしれません。しかし、それはあくまで「うまくテーマ株を選べること」が前提です。間違えたテーマ株を買って、損をしてしまう場合もあります。
損をしやすいテーマ株投資の典型例は「すでに大きく上がった後の、有名なテーマ株を高値で買ってしまう」ことです。
参考までに、筆者が約10年分の日本株データを分析してみたところ、業績が絶好調に伸びている株を買うときでも、株式市場で活発に取引されている「有名な株」ほど、株価が上がりにくい傾向を確認しました。具体的には、直近1カ月間の平均売買代金が1億円を超えているテーマ株は、すでに注目を浴びすぎていることが多く、株価も伸び悩みやすい傾向がありました。
成長株投資の巨匠、ケン・フィッシャーは「最も収益性の高い普通株投資は『若くて急成長中で、今のところウォール街での人気が今ひとつ』という銘柄からもたらされる」と言いました。
つまり、上がる株にはたしかにテーマ性はあるのですが、「まだテーマ株として注目されていない、次に流行しそうなテーマ株を買うことが大事だ」ということです。
多くのテーマ株は「大きく値上がりしたけれど、人気がさめるとともに株価が暴落して、もとの水準まで戻ってきてしまう」ものです。ですから、テーマ株を買うときには、「すでに盛り上がっていて、これまで株価が上がっている」ものを選ぶと、損をしやすい恐れがあります。
これまで上がった株と、これから上がる株は別物です。
テーマ株に投資したい方は、まだ市場参加者に注目されていない、注目度の低い銘柄の中から、「次のテーマとして脚光を浴びそうなもの」を先回りすることを目指すべきでしょう。
つまり、僕らが探すべきは「次のヘッドウォータース」であり、すでに上がってしまったヘッドウォータースに投資するのでは「遅すぎる」ということです。
具体的な目安は、時価総額が50億円を下回っていて、かつ直近1カ月間の平均売買代金が1億円を下回っているものを選ぶとよいでしょう。これらに加えて、足元で業績が急成長しているものを選ぶのが理想的です。
まとめ
要点をまとめると、「テーマ株には短期間で値上がりするものがあり、夢がある」「僕らが買うべきは、すでに盛り上がった後のテーマ株ではなく、まだ盛り上がる前のテーマ株だ」という2点に集約できます。筆者の経験上、テーマは「安くてよい株が注目されるきっかけ」に過ぎません。どんなに魅力的なテーマがあっても、高い株や悪い株を買ってしまえば損をしてしまいます。よって、あなたが投資をはじめたばかりなのであれば、まずはテーマを考えずに、投資の基本に従って「株価が安くて業績がよい株」を買うのがよいでしょう。
投資の基本をおさえていれば「ゆっくりでも着実に儲けられる」可能性が高いです。そして、このような「投資の基本」で結果を出せるようになった後に、さらに利回りを上げるためにテーマに注目してみるのがよいと思います。
基本をおさえずに「一足飛び」で儲けようとしても、失敗する可能性が高いです。目先の話題に飛びつかず、まずは基本に忠実に投資できるようになりましょう。