人間関係

友だちがいない夫が定年を迎える恐怖。思わず「やめて!」と言ってしまった“地獄”の提案(2ページ目)

夫は一人で過ごすのが平気な無口なタイプ。いままで一度も友人を家に連れてきたこともない。定年退職した後のプランも漠然としていて仲間もいない夫に、全面的に頼られるようになるのでは?と不安がつのる日々を送っている。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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 何か好きなことを見つけてほしい

トモコさんは夫に「来年、定年になったらどうするの?」と聞いてみた。すると夫は「別に。何も考えてない。一緒に船の旅でもしようか」と言い出した。

「『やめてよ』と思わず言ってしまいました。船旅なんて、長旅だし途中で下りられないでしょ。しかもずっと一緒にいなきゃいけない。地獄じゃないですか(笑)」

夫を嫌いなわけではない。ただ、ずっと一緒にいるのが耐えられないのだと彼女は言う。旅に行くなら国内で、自由行動、夕飯のみ一緒というならいいけどとモトコさんは伝えた。すると夫は悲しそうに目を伏せて「そんなにオレのことが嫌い?」とつぶやいた。

「『嫌いじゃない。でも長年、夫婦やってるでしょ。この年になったら、それぞれ自立してもいいんじゃないかと思う』と言ったんですよ。そうしたら夫は、ふうんと言ってそれきり。反論があるならすればいいのに、途中で話をぶった切って終わってしまう。だから夫とは話したくなくなるんです」

とはいえ、無口な夫には言葉を紡いでいく楽しさがわからないのだろう。だから無理強いするのもよくないと、モトコさんもあきらめてしまう。だから夫が、本心で何を望んでいるのかが見えてこない。

「そういう人だと思って27年やってきたので、それはそれでいいんです。ただ、これからはただでさえ老いていくんだから、体が動くうちに好きなことをしたいと私は思っています。もっといろいろな人と知り合いたいし、出かけてもいきたい。夫と一緒にとは考えていません。夫にそのあたりをわかってもらえればいいんですが」

強く言うとさみしそうな目をするので、それ以上言えなくなってしまうこともある。根が優しい夫を傷つけるつもりはないのだ。ただ、夫が年齢以上に老けてみえるのは、やはり何かしたいことがあるわけではないところが大きいのではないかと彼女は感じている。

「こんな夫を鼓舞しながら老後を過ごすことになるのか、あるいは私は私で勝手に行動してしまったほうがいいのか。そのあたりが悩みの種ですね。病は気からというから、毎日出社しなくてよくなると、夫が気力までなくしていくのではないかと心配でもあります」

すがりついてくるようならいっそ家を出てしまいたい。そんな思いのかけらを抱きながら、退職日までは夫の健康を保つため、彼女は栄養を考えたお弁当と夕飯を作り続けようと決めているという。
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