趣味といえば読書と犬の散歩くらいな夫
友だちのいない夫
「夫が来年、定年退職を迎えるんです。週に数日はアルバイト的に仕事を続けるかもしれませんが、とうとう“老後”がやってきたという感じ。夫には友だちがいないんです。全面的に私を頼る日々が始まるかと思うと、私も戦々恐々としています」そう言うのはモトコさん(56歳)だ。8歳年上の夫は来年の春、定年を迎える。根は優しいのだが、無口で愛想がない。結婚して27年経つが、夫が家に友だちを連れてきたことは一度もない。
「長男は就職で遠方に行きましたが、下の娘とは同居しています。娘ももう大人なので、うちに間借りしているような感じ。食事も一緒にとるのは月に数回ですね。それでも娘がいてくれるだけで、夫との距離感を気に病まずに過ごせる。娘がもし家を出て行くとなったら、私も出て行こうかなと思うくらいです」
夫は実直に仕事をこなしていく職人タイプ。決して出世街道を歩んだわけではないが、その誠実な仕事ぶりは評価されていたようだ。ただ、お酒を飲まないので飲み会などにもほとんど参加せずにここまで来てしまった。
「私もお酒はほとんど飲まないけど、パート仲間の飲み会には毎回参加していますし、学生時代の同窓会にも行きます。人と集うのが好きなので。でも夫はそうじゃない。時間があると、部屋で本を読んだり譲渡してもらった保護犬と散歩したり。娘は人と集うのが嫌なら、好きな本のことや犬のことをSNSで発信したらどうかな、リアルで会わなくても人とつながることができるよと、それとなく夫に勧めたみたいですが、うんと言ったきり。夫はいまだにガラケーですし、パソコンは使っていますが、SNSはいっさいやってない」
そんな夫だから、友だちをほしがっているようにも見えないとモトコさんは言う。夫自身、友だちがいないことに違和感や恐怖感を覚えていないのだろうか。
>夫のことは決して嫌いなわけではないけれど。