私だって子どもでいたいわけではない
親子はどこまでいっても親子なので、年齢がいっても確かに子どもなのだが、「精神的にも子どもだと言われているような気がして不快」だとサホリさんは言う。「私自身は、大人3人の同居というつもりでいるし、両親も必要以上に子ども扱いはしません。でも周りにはそんなことはわかりませんからね。独身の子どもが同居しているだけで、こどおじとかこどおばとか言われてしまうんですよね」
親戚からも、「いつまでも親のすねをかじって」と言われることがある。だが、サホリさんは食費も出しているので、それは当たってはいない。
「親は親で年金でなんとか生活している。私は私の収入で暮らしている。家賃は払っていませんが、親の携帯も私が払ってるんですけどね」
ここまできたら、たとえ結婚しても遠方には住めないと彼女は言う。同居とまではいかなくても、近所に住まなければ親の面倒を見る人がいないからだ。
「この先の不安は、親が介護を必要としたときですね。家で介護するようになったら、仕事を辞めなければいけないのかと考えることもあります。でもそうしたら、親亡き後、私が生きていけない。本当は家だってもう古いですから、リフォームくらいはしたい。でも正直言って、私自身、いつまで今の状態で働けるかわからない。親が長生きするのをうれしいと思えなくなっているのが我ながらつらいです」
自分も決して長生きしたいとは思えない。独身だからではなく、経済的に苦しいからだ。それでも日々、なんとか楽しく暮らしていくしかないのだ、生きている限りは。
「誰かが何か言うことを止められないけど、面と向かって『こどおば』と言う人にはやはりがっかりします。正規社員になれなかった、結婚できなかった、子どもを産めなかったと他人は思うかもしれないけど、仕事だってフリーランスの人もいるし、結婚はしなかった、子どもを望まなかったという人がいても不思議はない。親と同居し続けるのも、消去法とはいえ私の意志ではあるんですから」
話しているうちに少し口調がキツくなっていったサホリさん。思い通りにいかないのが人生ではあるが、それを他人に揶揄されたくはないという彼女の気持ちが伝わってきた。