夫が入院中も苦労をした妻
夫が余命半年とわかったとき、妻は
「夫の余命が半年とわかったとき、私は主治医に『夫には伝えないでください。彼は気が弱いのできっと生きる気力をなくしてしまう』と頼み込みました。主治医はしばらく考えていましたが、『人の寿命はわからない。余命を告げても長く生きる方もいます。本人の気力も重要だから、ここは奥さんの気持ちを尊重しましょう』と言ってくれました。主治医が夫の遠戚だったから、私の言うこともきいてくれたのかもしれません」ミナコさん(48歳)は目を伏せながらそう言った。夫の余命が告げられたのは2年前。当時、夫は52歳だった。そして主治医の言葉通り、夫は半年後に還らぬ人となった。だが、ミナコさんが夫に余命を告げなかったのは、「夫に充実した最期を迎えさせたくなかったから」という“とんでもない”復讐のひとつだったのだ。
「誰かに話したかったけど、ずっと話せずにいました。6歳年上の夫とは18年間、ともに暮らしましたが、楽しかったのは妊娠がわかったころまで。あとは夫の暴言に怯える日々だったんです」
職場の先輩だった夫は、家でも「人生の先輩」として振る舞った。子どもができたと伝えたときは大喜びだった夫だが、ミナコさんがつわりに苦しんでいると「妊娠は病気じゃないんだから。気のせいだよ」と言い放った。気持ちが悪くて料理ができないから外で食べてきてと言うと、「帰ってから作るよ」と帰宅。イライラしながら作っているのを見かねて、結局、ミナコさんがやる羽目になる。
「食べてきてくれればいいのにと言ったら、『何のための専業主婦なんだよ。自分だけラクしようとするな』と見当違いの言い方で怒られた」
子どもが産まれたときは周りから「お父さんにそっくり」と言われてうれしそうだったが、しばらくすると子どもの世話にも飽きたようで、おむつひとつ取り替えなくなった。専業主婦だという負い目もあり、その後産まれた次女も含め、家事育児はほとんどひとりでこなしたとミナコさんは言う。
>夫を「精神的に捨てた」あの瞬間