昨年末に会うはずだったが
昨年末、「この年末年始こそ、コウヘイの実家に行こう」とフミカさんは促した。ところがばつが悪そうに夫が言ったのは、義母が退院したばかりだから今は無理、という話だった。「しかも40日も入院していたというんです。脳梗塞で、ほんの少しだけど麻痺が残っている、と。どうしていってくれなかったのと聞いたら、『おふくろがフミカには言うなって。心配させたくなかったんだと思う』って。コウヘイはそうやって母をかばっているんですよ。本当は義母は私に会いたくないんじゃないかと思う」
そう言ってみたら、「どうせ今は見舞いもできないから、わざわざ言う必要がないと思ったんじゃないかな」とあくまでもコウヘイさんは「状況のせい」にしようとした。
「でも、私、そのあと知ってしまったんですよ。コウヘイの弟夫婦は、義母の入院中、実家に行って義父と食事をしたりしているのを。義妹と電話で話したときに彼女がそのことを伝えてくれた。コウヘイも顔を出したことがある、と。『お義姉さんはどうしてこないのかなと思ってた』と言われました」
うちの両親が離婚しているから、義両親は実は結婚に反対だったのではないか、私が子どもを産めないからかと、フミカさんはさまざまな考えをめぐらせた。
「こういうことで溝ができるのは嫌だから『コウヘイは実家に行ったんでしょ』とはっきり聞きました。彼は『義妹が言ったんだね』と納得して、実家に行ったことを認めました。私を連れて行かなかったのは、リアルに会うのは初めてなのに両親が揃っていないのは悪いと母親が遠慮しているからだって。本当にコウヘイがそう思っているのか、親にそう言われたから言っているだけなのかはわかりませんが……」
結婚したからといって、義両親と仲良くなれるかどうかはわからない。だがこれも縁。フミカさんのほうは、会わないと頑なになっているわけでもない。
「コウヘイは近いうちに必ず会わせるからと言っていたんですが、このタイミングで彼に転勤の話が出てきて……。両親に会う前に単身赴任で彼がいなくなってしまいそうです」
離婚する気など毛頭ないが、夫の両親の気持ちを確認できないまま、現実だけが進んでいくようで、どことなく不安が募るとフミカさんは言った。
「なるようにしかならないとコウヘイは言うんですが、なるようにさせないといけないと私は思う。鳴くまでホトトギスを待つのか、鳴かせてみせるのか。彼と私の性格の違いが浮き彫りになった一件でもあるんですよね」
それでも、結婚の第一義は「ふたりの気持ち」だと、フミカさんは改めて考えている。気になる義母の言動だが、ここは見過ごして時機がくるのを待つしかないのかもしれない。