夫の転勤で新たなママ友関係を作るのが大変
夫の転勤で、1年前に関東某県から遠方の地域に引っ越したフユコさん(42歳)。10歳と6歳の子を抱えながらも、彼女はすでにパートで仕事を見つけて働いている。「職場の人とは当たり障りなく付き合っていますが、ママ友との関係がなかなか大変です。下は保育園だけど、上は小学生。なんだかんだで付き合わないわけにはいかない。うちは転校生だったし、親同士の関係が子どもに影響したらかわいそうですしね」
ところがママ友関係の集まりで、フユコさんがいきなり言われたのは、リーダー格のママからの「ご主人、どこにお勤めなの?」という一言だった。フユコさん一家は、夫の会社の借り上げマンションに住んでいる。会社名を隠す気はないが、そもそも「自分のことを聞かれれば答えるけど、夫のことは答えたくない」のが彼女の性格。
「まあ、普通の会社ですよと言ったら、普通ってどこなの?大手? ああ、Aという会社じゃない? 前も転勤で来ていた人たちいたわよね、とやたら盛り上がっちゃって。しかたないから言ったんですが、企業名はそこそこ知られているようで、『すごいわね。だったらあなた働かなくてもいいじゃない』と言われました。うちの夫はエリートでもないし、収入が多いわけでもない。働く働かないは私の問題ですしね」
ムッとしたがその場は「おとなの対応」でしのいだ。だが、行事の前後に集まりたがるママ友たちからは、その後も、出身はどこなのか、夫とはどうやって知り合ったのかなど、「どうでもいい話」を聞かれることが多かった。
「面倒になって、『ごめんなさい、私がしゃべっても、たいして楽しい私生活は出てこないので』と笑ってごまかしたら、『秘密主義』と言われるようになりました。LINEのグループもあったけどほとんど参加していません。学校関係の大事な話なら別のルートでくるし。抜ける勇気がないので、とりあえずいますが、ほとんど読んでいません」
一度、「あなたって変わり者だってみんな言ってるわよ」と言われたので、内心、「ラッキー」と思ったとフユコさんは笑った。
「変わり者というレッテルを貼られれば、もう誰も私に期待はしないでしょうから。みんな同じ、みんな一緒と思うから辛くなる。変わり者だと思われたらあとはラクだと思っています」
しばらくたったころ、夫が苦笑しながら帰宅。「駅からの帰り道、近所の奥さんに呼び止められて、『奥さん、変わり者ね』って言われた」そうだ。フユコさんはことの顛末を話し、「変わり者として認められてよかった」と言った。
「夫は仲間はずれにされないように気をつけてと言ってくれたけど、別にどうでもいいなと思っているんです。職場もあるし、最近、駅の近くのスポーツジムに入会して、そこでも知り合いができたから。昔からの友人とはオンラインでの付き合いしかできないけど、いずれはまた引っ越すでしょうし。一時期は、溶け込まなくてはいけないと焦ったんですが、私には無理。そして大事なのは家族。それ以外のことはあまり気にしないことにしました」
ここまでさらりと語れるなら、「変わり者」のレッテルも確かに悪くない。