確かに、本人が自ら述べたならいざしらず、宇宙飛行士候補になったからといってプライバシーを明かさなければならない理由はない。
宇宙飛行士候補の米田あゆさん 写真:毎日新聞社/アフロ
彼女は、1985年に宇宙飛行士に決定、翌年、長年の友人で同僚でもあった医師の向井万起男さんと結婚したことで姓が変わり話題となった。この向井万起男さんが、なかなかにキャラの立った人で、おかっぱ頭で妻の宇宙飛行士という立場を淡々と、だがうれしそうに全面支援していたのが興味深かった。
彼の著書のタイトルは『君について行こう』である。あれからふたりはずっと、それぞれ好きなように生活しているらしい。2017年のインタビューで、向井千秋さんは「いわゆるみんなが考えているような夫婦とは違いますね。お財布は別々だし、お互いいくら稼いでいるかも知らない。今はメールとか電話があるから、連絡は取れるし、寂しいなんてこともないですね」と話している。
プライベートを聞くのは「くだらない」のか?
プライベートな生活を明かすも明かさないも本人次第。だからといって、「家族構成やパートナーの有無」を聞くことが必ずしも「くだらない質問」とは言いきれないとも思う。結婚して子どもがいる宇宙飛行士ママがいるならそれもいいし、もちろんLGBTQの飛行士がいてもいい。質問によって、そんな打ち明け話が聞けるなら、それもまたいいのではないだろうか。もちろん、答えない権利もあるわけだし。
宇宙飛行士だからといって、それ以外の質問はくだらないと斬り捨てるのは、少し「もったいない」気がするのだ。
その人がどうやって宇宙に興味を持ち、どんなふうに努力を重ねてきたのかはもちろん重要だ。ただ、一般人から見ると雲の上のようなエリートに思われがちなその人が、私生活ではどのように暮らしているのかを知れば、さらに宇宙飛行士という職業も広く知られる可能性がある。その人自身に興味をもってもらうことも、聞き手としては意識せざるを得ないのだ。本人がそれをよしとしないなら、米田さんのように断ればいいだけのことだ。
>あの質問は「不快でした」との声も……