食生活・栄養知識

ビタミンKを多く含む食べ物・ビタミンKの種類

【薬学博士・大学教授が解説】ビタミンKは血液凝固に必要な栄養素で、ほうれん草、小松菜、春菊や、海藻類などの他、納豆、チーズ、キムチなどの発酵食品にも含まれています。そしてビタミンKには実は5種類あり、食品によって異なります。健康効果と、どのように食べるのが効果的かを解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

ビタミンKを多く含む食べ物……ほうれん草、小松菜、春菊・海藻類など

食品に含まれるビタミンKにもいろいろある

ほうれん草などの食品とビタミンKの関係


ビタミンKとは…多く含む食品・止血に欠かせない大切な役割」で解説したように、ビタミンKは、脂溶性ビタミンの一種で、「血液凝固に必要な栄養素」として見出されたことから、当初は Koagulations Vitamin(ドイツ語で「凝固ビタミン」という意味)と呼ばれ、これが後に略号 K をあてはめて「ビタミンK」と呼ばれることになったものです。

そもそもビタミンとは、「生物の生存・生育に微量に必要な栄養素で、その生物の体内で十分な量を合成できない炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物」と定義されますから、ビタミンKも、私たちの体内では必要量を作ることができませんので、食べ物から摂り入れる必要があります。

ビタミンKを比較的多く含む食品としては、ほうれん草、小松菜、春菊など緑色の濃い野菜や海草類が挙げられます。青汁などの健康食品にも含まれています。また、野菜に比べると含有量は少なめですが、肉の中では豚肉に比較的多くのビタミンKが含まれています。さらに、納豆、チーズ、キムチなどの発酵食品にもビタミンKが含まれています。

しかし、「ビタミンK」は、似たような化学構造をした化合物の総称で、実際には、たくさんの種類があり、食品によって違う形のビタミンKが含まれています。そこで今回は、それぞれの食品にはどんなタイプのビタミンKが含まれているのか、それらの効果には違いがあるのか、より効率よくビタミンKを機能させるためにはどの食品を選ぶのがよいのかなどについて解説します。
 

5種類のビタミンK……天然に存在するビタミンK1・K2の違い

ビタミンKは、大きくK1~K5の5種類に分けられますが、そのうち天然に主に存在するのは、K1とK2です。その代表的なものを下図に示します。
ビタミンK1,ビタミンK2,ビタミンK3

ビタミンK1, K2, K3の化学構造

図を見て気づかれたと思いますが、ビタミンKは共通して、2-メチル-1,4-ナフトキノンという構造(図中、灰色で塗った部分)をもっています。この共通構造の横に、炭化水素の鎖がジグザク状に伸びた部分(専門用語では「側鎖」と言う)の違いで、細分類されます。

ビタミンK1は、1種類しかなく、別名「フィロキノン(phylloquinone, 略号; PK)」とも呼ばれます。側鎖中の炭素数は4x4=16個で、鎖の中に1か所だけ二重結合(”=”で示された部分)があるのが特徴です。

ビタミンK2は、何種類もありますが、総称して「メナキノン(menaquinone, 略号; MK)」とも呼ばれます。ビタミンK1との主な違いは、側鎖の中に二重結合が等間隔で繰り返し入っていることです。そして、側鎖中の炭素数が4x1=4個で二重結合数が1個だけのもの(MK-1)から、側鎖中の炭素数が4x14=56個で二重結合数が14個のもの(MK-14)までが知られています。上の図中には、ビタミンK2のうち代表的なものとして、MK-4とMK-7を載せておきました。

ちなみに、上図中にはビタミンK3も示してありますが、ビタミンK3は、1種類だけで、別名「メナジオン(menadione, 略号; MD)」とも呼ばれます。ビタミンK1やK2の側鎖が無くなった形をしています。一般には、合成品として扱われますが、ビタミンK1やK2の代謝物としてヒトの尿中に検出されることもあります。
 

食品によって異なるビタミンK

私たちの多くが日常的に摂取するビタミンK源は、緑黄色野菜、植物油、豆類、海藻などで、これら植物性食品に含まれるビタミンKは、ビタミンK1です。

摂取量としては少ないですが、豚肉、牛乳、鶏卵などの動物性食品に含まれているビタミンKは、ビタミンK2のうちの MK-4です。

発酵食品に含まれているビタミンKも、ビタミンK2が主ですが、食品ごとに種類が違います。もっともビタミンKが豊富だと言われる納豆には MK-7、チーズには MK-8、キムチには MK-6 が含まれています。
 

どのビタミンKを摂取するのが健康的? 各食品をバランスよく、が正解

ビタミンKにはたくさん種類があり、食品ごとに違うものが含まれているのなら、どれを食べるのが一番いいのでしょうか。気になりますね。

その答えを知る手がかりがあります。

私たち人間が、日常的に食事から摂取するビタミン K の大部分は、植物由来のビタミンK1です。日本人は納豆を食べる習慣がありますので、ビタミンK2のMK-7もそこそこ摂取しています。一方、豚肉や卵などの動物性食品にはビタミンK2のMK-4が含まれていますが、含量がそれほど多くないこともあり、摂取できる量は非常にわずかです。それにもかかわらず、私たち人間の組織中のビタミンKを測定してみると、ビタミンK2のMK-4が最も高濃度に検出されます。

また、ビタミンK3は、人間に対しては毒性が強いため使用されませんが、実験に供されるマウスやラットを飼育するときの飼料中には、ビタミンK供給源としてビタミンK3が添加されているので、マウスやラットが摂取するのは、もっぱらビタミンK3です。それにもかかわらず、マウスやラットの組織中ビタミンK量を調べると、MK-4 が多く検出されます。

摂取量が極めて少ない(人間)、または食べてもいない(実験用マウスやラット)MK-4が、どうして体内に一番多く検出されるのでしょうか。実は、どのビタミンKを食べても、動物(人間でもネズミでも同じ)の体内に入ってしまえば、それらがMK-4に変換されて、血液凝固などに利用されているのです。

なお、食べたときに吸収されて体内に入る割合は、側鎖の長さによって違うようです。ビタミンK1やMK-4よりも、MK-7の方が吸収されやすいという研究データも報告されています(Blood, 109(8):3279-3283, 2007; Nutr. J., 11: 93, 2012)ので、納豆由来の MK-7 がお勧めです。しかし、納豆をひたすら食べるとか、特にMK-7を含んだサプリメントを選んで利用するという必要はありません。よく考えてみると、まったく納豆を食べる習慣がない諸外国でビタミンK不足が問題になっているわけではありませんし、納豆以外のいろいろな発酵食品(チーズやキムチなど)にも、側鎖の長いビタミンK2が含まれています。

結局のところ、納豆だけではなく、緑色の野菜、豚肉、チーズなども、全部バランスよく食べていれば良いということです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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